束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「ねえ、俺が彩子に触れたとき、彩子どういう顔してるかわかってる?」
「え?」
「彩子は俺に触れられたとき、ふわって嬉しそうに笑うんだよ? ものすごくかわいい顔するんだよ? そんなの好きになるしかないでしょ」

 彩子は隠しているつもりだったが、彩子の気持ちは表面に出てしまっていだのだろうか。今になって変な汗が出てくる。

「しかも、彩子自分がどれだけ優しいかわかってる? 俺のこと優しいって言うけど、彩子のは桁違いでしょ」

 それはさすがに否定したかった。洋輔はいつも彩子に優しくしてくれたのだから。

「洋輔のほうが優しいと思うけど……」
「違う。彩子が自分で証明したじゃん。小谷のこと好きなのわかった上で、付きあおうって言ったんでしょ? 坂本さんから聞いた。普通はそんなことできないんだよ。しかも、自分のことは全部隠して、ただ俺のことだけ考えてくれたんでしょ?」
「それは……」
「それに、初めて彩子を抱こうとしたとき、あと、あのひどい抱き方したとき、俺の心が軽くなるようにわざとおどけてみせた。そんな優しさ向けられたら、好きにならずにいられないから」
「……えっと……」

 わざとあんな態度を取っていたことがばれたかと思うと恥ずかしくてたまらない。

「あと、彩子はからかうとちょっと拗ねるでしょ? それがかわいくてたまらない。彩子の鼻歌も好き。仕事中は頼りになるところも好きだし、寝起きでちょっと目が開かないときの顔も好き。あと、ベッドで」
「もういい!」

 とんでもないことを言われそうで慌てて遮った。

「なんで、まだあるよ」
「もういい、わかった。恥ずかしい……」

 あまりの恥ずかしさに、彩子は持っていたタオルに顔を押しつけるようにして俯いた。

「ははっ。照れてる? それ。その照れてるのも俺にはかわいくてしかたないの。わかった?」

 これ以上は心臓が持ちそうにないと必死に頷いてみせた。
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