束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「ねえ、彩子」
「ん?」
「一緒に暮らそうか」
「え?」

 彩子は驚いて、タオルを外して洋輔を見上げた。

「一時的にってことじゃなくて、ちゃんと家探して、二人で一緒に暮らそう?」
「一緒に……」
「うん。体調が心配ってのもあるけど、もう彩子とは離れてたくないから。本当は今すぐにでも結婚したいくらいだけど、まずは、俺が彩子のこと好きだって、ちゃんと信じてもらえるように、彩子を愛する時間を俺にください」
「洋輔……」

 嬉しくて嬉しくて涙が勝手に溢れてきた。

「あー、もう、また泣いたら腫れがひどくなるよ」
「だって……」
「一緒に暮らしてくれる?」

 洋輔は彩子の涙を拭いながら、柔らかな微笑みを浮かべて、もう一度尋ねてきた。

「うん、一緒に暮らす……洋輔と一緒がいい……」
「はぁ、よかった。ちょっと緊張した……ありがとう、彩子。じゃあ、ご両親に挨拶させてもらえるかな?」
「え?」

 同棲で両親への挨拶を望まれるとは思わなかった。

「一緒に暮らすなら、ちゃんとご挨拶して、認めてもらってからにしたい」

 それはすごく洋輔らしい言葉だと思った。


「……わかった」
「ありがとう、彩子」



 結局、同棲の話をした翌週に、折戸家への挨拶を執り行うこととなった。洋輔に急かされて両親に連絡してみれば、それならば次の週末にとトントンと話が進んでしまった。
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