束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「はい。本日は彩子さんと一緒に暮らす許可をいただきたくお伺いいたしました。結婚前の同棲をご不安に思われることかと思いますが、私たちには今、共に過ごす時間が必要です。もちろん結婚は考えていますが、私がつい先日まで一年ほど海外に出向しておりましたので、まずは二人の時間を作ることが必要だと考えました。どうか彩子さんと一緒に暮らすことをお許しいただけないでしょうか」

 洋輔が深く頭を下げたので、彩子も同じように頭を下げた。今日一番の緊張が襲ってくる。

 きっと洋輔は彩子の比ではないだろう。だが彼はとても堂々としていて、それが彩子を安心させる。


「うん。わかりました。いいですよ」

 父は随分あっさりと許してくれた。


「ありがとうございます!」

 洋輔はお礼を言うともう一度深く頭を下げた。


「ははっ、頭上げてください。彩子から先に話は聞いていたんです。今回の挨拶も松藤さんのほうからご提案なさったと。確かに親としてはね、結婚してくれるならそのほうがいいとも思いますが、彩子が納得しているのなら私たちは反対しませんよ」
「ありがとうございます。必ず彩子さんを守ります。幸せにいたします」
「うん、よろしくお願いしますね。彩子も、彼を幸せにしてやりなさい、ね」
「うん。ありがとう、お父さん」

 彩子はこの優しい父が大好きだ。いつだって大きく包み込んでくれる。
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