束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
『キスしていい?』

 文字で書かれると随分と恥ずかしいものなのだと彩子は初めて知った。

『そういうこと聞かないでよ』
『しちゃうよ?』
『だから聞かないでよ』

 洋輔が彩子の頬に手を添えてくる。どうぞという気持ちを込めて目をつむれば、上唇をはむようにしたキスがやってきた。


『彩子かわいい』

 洋輔は随分と楽しそうだ。声は出さずにずっと笑っている。

『すぐからかう』
『彩子がかわいいからしょうがない』
『あんまりいじめたら怒っちゃうかもよ?』
『ごめんなさい』

 頭を下げてくる洋輔がおかしくてしかたない。


『許してあげる』

 それを確認した洋輔は彩子の手を取るとその甲に口づけを落とした。ありがとうとでも言っているようだ。

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