束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 一人で歩いているときには長い十五分も二人で歩けばあっという間だった。

 彩子の住むアパートまで到着し、二人は歩みを止めた。

「ここが私の家」
「うん。あっという間に着いちゃったね」

 洋輔も同じことを思ってくれたのが嬉しい。

「そうだね」
「はあ、名残惜しいや」

 恋人関係にあるいい大人なのだ。普通ならこのまま自宅に招くのかもしれないが、二人にとってそれは正解ではないだろう。

 もちろん彩子はまったく意識していないわけでもないのだが、今の二人の関係はそうではないと思う。不用意に踏み込んで壊したくはないのだ。洋輔もきっとそれを期待して送ったわけではないと思う。彩子も名残惜しく思うが、ここで引きとめるべきではないだろう。

「うん。まあ、会社でまたすぐに会えるよ。それに来週もどこか行くんでしょ?」
「うん。あ、来週さ、ドライブでもいい?」
「いいけど。松藤車持ってるの?」
「うん。ここまで迎えにくるから」
「わかった。あ、でもここだと道幅狭くて停めにくくない? さっき通った公園の前でもいい?」
「あー、確かに。そうするよ。時間とか詳しいことはまたあとで連絡する」
「うん、ありがとう。楽しみにしてる」
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