束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「順調にいけば二時間くらいだけど、混んでる可能性高いし、もっとかかるかな。お昼は途中のサービスエリアで取ろうか」
「うん、わかった」
「コンビニとか行きたかったら、先に寄るけどどうする?」
「ううん、大丈夫だよ。飲み物とかお菓子とか持ってきたし」
「さすが。はい、これ。何か聴きたい音楽あったらかけていいよ」

 洋輔はスマホを手渡してきた。画面を見れば音楽アプリが立ち上がっている。

「それ古いやつで、今は車で音楽聴くように使ってるから、気にせずいじっていいよ」
「あ、そうなんだ。ありがとう。じゃあ、なんかテンション上がるような曲かけようかな」
「うん。好きなのかけていいよ。選曲は任せる」
「おう任された! あ、洋輔」
「ん?」
「今日は運転よろしくお願いします」

 彩子は深々と頭を下げた。

 免許は持っているものの彩子はペーパードライバーだ。一日洋輔に運転を任せることになる。

「かしこまりました。安全運転で行きますね」

 洋輔は片手を胸に当ててお辞儀をした。それがまたなんともさまになっている。

「ありがとう」
「じゃあ、行こうか。シートベルトは締まってる?」
「うん、大丈夫」

 車は緩やかに発進した。二人きりの空間に胸がドキドキとするが、それと同時に心地よい気分でもあった。洋輔の運転はとても穏やかで、安心して身を任せられる。
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