束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 彩子の自宅近くの公園まで戻ってきた。

 車が停止すると、洋輔がこちらをじっと見つめてくる。もう一度キスされるのではないかと一人ドキドキしていれば、予想に反して洋輔は普通に口を開いた。


「彩子。来週はデートお休みでもいい?」
「うん、いいけど」
「来週は次のデートの準備の時間にしてほしい」
「うん? 次?」
「次はちょっとおしゃれしてきてくれる? ここのレストランで食事しよ?」

 見せられたスマホの画面を確認すれば、少し高そうなレストランのホームページが表示されていた。ドレスコードにスマートカジュアルと書かれている。その準備をしておいてほしいということらしい。

「あー、ドレスコードがあるのか。わかった。準備しとくね」
「うん、ありがとう。それと……」


 なぜかそこで洋輔は言い淀んだ。


「それと?」
「食事のあと……このレストランが入ってるホテルに、一緒に泊まってくれる?」



 彩子は息をのんだ。

 これはそういうお誘いだ。さっき洋輔は次のデートの準備をと言った。それは食事のことだけではなくて、抱かれる準備もしてこいという意味だろう。

 付きあうと決めた時点で元々彩子は覚悟していた。友人の延長とはいえ、子供でもあるまいし、それも含むことは最初からわかっている。ただ洋輔にはその気がないかもしれないと思って素知らぬふりをしていただけだ。

 そこに踏み込むことに不安がないかといえばそれは嘘だが、それでもすべて受け止める覚悟はできている。だから彩子にそれを断る理由などなかった。

「……わかった。いいよ」
「本当に?」
「本当に。いいよ」

 彩子は準備期間を取ってくれた洋輔に感謝した。

 元々覚悟していたとはいえ、突然訪れるそれと心して臨むそれとではやはり変わってくる。それにどうせならば、きれいに磨いた自分を抱いてもらいたい。


 彩子はじっくり時間をかけて次のデートの準備をしていった。
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