束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
第三章 本物と偽物

1. 交流会の知らせ

 PCで作業を進めていると、画面端からメール受信の知らせがスライドインしてきた。

 『内定者交流会の参加依頼』と題されたそのメールを開いてみれば、翌年度入社予定の内定者との交流会に、先輩社員として参加してほしいというものだった。

 すでに上司の承諾は得ているようだから、ここで参加の是非を問うというよりは、参加の心づもりをしておけということだろう。詳しいことは来週行われる説明会で聞けるようだ。


 メールの宛先を確認してみれば、いくつかの部署から数名が選出されているようだった。その中に洋輔の名前を見つけて彩子は少しだけ顔をほころばせた。


 昨年のことを思い返してみれば、一つ上の先輩が同じように交流会に参加していたように思う。おそらく同じくらいの勤務歴の社員を中心に集めているのだろう。


『松藤、人事からのメール見た? 内定者交流会のやつ』


 彩子はチャットで洋輔に話しかけた。プライベートではすっかり下の名前呼びが定着している二人だが、会社では互いに名字呼びで通していた。付きあっていることも誰にも言っていない。

『ちょうど見てた。うちの部署からは俺と折戸が参加みたいだね』
『だね。確かさ、去年高杉(たかすぎ)さんが内定者交流会参加してたよね? あとで一緒に話聞いてみる?』

 高杉は二人の一年上の先輩社員だ。気さくな人柄だから、聞けば教えてくれるに違いない。

『そうだね。聞いてみようか』
『OK。じゃあ、高杉さんの時間ありそうなときに聞きにいこう』

 今、彩子と洋輔は異なるプロジェクトチームに属しているため、こうして仕事で洋輔と関われることが彩子は嬉しかった。彩子は気分上々でやりかけだった作業に戻った。
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