束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】

3. はじまり

 彩子は退勤打刻をすると、『いいよ』と送っていたメッセージに続けて、いつもの店でいいかと確認のメッセージを送った。すぐにOKマークのスタンプがつく。彩子はそれを確認すると先に会社を出た。


 店についた彩子は、店員にあとでもう一人来ると伝え、案内された席に座った。さっさと注文を済ませれば、ほどなくしてハイボールと枝豆が運ばれてくる。彩子はいつも通り待ち人のことは気にせず、一人でハイボールを口にした。

 もちろん誰彼構わずこんなことをしているわけではないが、今日の相手は今さら気をつかう仲でもない。それは向こうも心得ているはずだ。


 ハイボールで喉を潤し、どうせすぐに来るだろうと次は枝豆に手をつけた。

 そのまま一人でちまちまと枝豆をつまんでいたら、十分ほどで件の人物がやってきた。


「松藤、こっちー」
「ごめん、お待たせ」
「そんな待ってないよ」
「うん、でも折戸が先に着いてるし」
「そんな気にしなくていいのに」
「ははっ。性分だからしかたない。何頼んだ?」
「まだこれだけだよ。今日はがっつり食べる? それともつまみをいろいろ頼んで、だらだらやる?」
「うーん、今日はあんまり食べる気分じゃないかな。好きなおつまみ頼んでいいよ。俺もそれもらう」

 洋輔は彩子に頼みたいものが決まったかを尋ねると店員を呼んでビールを頼んだ。それに続いて彩子も適当に食べたいものを注文する。
< 6 / 273 >

この作品をシェア

pagetop