束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「え!? そんなことしてないですよ」
「いや、してただろ。仕事のこと何でも知りたがって、いろんな人質問攻めにしてたじゃん」
「あー……その節はご迷惑を……」

 そういう意味の迫るではなくて、仕事でということらしい。それに関しては大いに心当たりがあった。

「ははは、迷惑とか思ってないって。頑張って仕事覚えようとする新人を皆かわいいって思ってたよ」
「え、ちょっと恥ずかしいんでやめてください」
「照れるな、照れるな」

 この先輩とはこうして気さくなやりとりができるから楽しいのだ。彩子と高杉がじゃれあう中、洋輔はずっと黙ったままだ。

「折戸さんと松藤は二人とも優秀だよ。そんな二人から話聞けるのは内定者にとってもいい経験になると思うよ。でも松藤は気をつけとけよ」
「まあ、はい」
「モテても手は出しちゃだめだぞ」
「しませんよ、そんなこと。そもそも彼女いますし、彼女のこと大事なんで」
「どストレート……俺が恥ずかしくなるんだけど。まあ、それなら心配ないかな」


 彩子は自分も恥ずかしいと叫びたかった。会社での不意打ちは本当にやめてほしい。


 彩子と洋輔がお礼を言うと高杉は自分の業務へと戻っていった。彩子と洋輔も、スライドのことはあとで相談しようとだけ決めて、各々の業務に戻った。
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