束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 打ち上げが終わったのは午後八時半を回ったころだった。

 小谷は少し酔っているようで、洋輔はそんな彼女が心配なのか駅に向かう間ずっとその隣を歩いている。彩子は胸に巣くう暗い気持ちを追いやるようにして、他の社員との会話に意識を向けた。


 駅に到着すれば、皆そこで別れの挨拶をし、各自の路線に向かって散らばっていった。

 洋輔は壁際のほうに小谷ともう一人人事部の女性と一緒に立っている。洋輔はその女性と何やら話したかと思えば、女性はなぜか彩子のほうをちらりと見て頷いたあとにそのまま帰ってしまった。洋輔が帰したのだろう。

 普通なら自分の恋人と他の女性を二人きりにするのはおかしなことだが、彩子たちの関係は普通ではない。ここは自分が離れるべきなんだろうなと彩子は思った。洋輔はここで送り狼になったりしない。任せておけばいい。小谷とのそのささやかな時間くらい許されるだろう。

 彩子は自分にそう言いきかせて、自分も帰宅しようと改札に向かって歩きだした。
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