束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
 だから何も言わずに歩いていた。一歩一歩別れのときが近づく。

 そして、ああもういよいよお別れだというところで、きゅっと繋いでいた手を握りしめられた。


 そこに込められた意図はわからない。ただの謝罪の気持ちだったのかもしれない。

 でも、もしかしたら人恋しいのかもしれないと思った。


 正直、今、洋輔の隣にいるのは苦しくてしかたない。だがそれでも洋輔が望むのなら彩子は喜んでその身を捧げようと思った。

「今日洋輔ん家泊ってもいい?」
「うん。おいで」

 ゆっくりとしていた足取りは、どこか力強く性急なものに変わった。帰る道中二人は一言も話さなかった。

 洋輔の家に上がれば、勢いそのままに抱かれるのではないかと思ったがそんなことはなかった。その日はただ手を繋いで眠りについた。

 翌朝にはもういつもの洋輔に戻っていた。
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