青空の向こう
「出来るなら、手早くお願いします」
「そうじゃな。お互いのためにもな」

そして、村長は要件に入る。内容は簡単な物だった。

はっきり言えば村の為に旅に出ろ、と言う。旅に出るつもりだったからその事には異存はない。しかし、『村の為に』と言う事が気に入らない。占い師の為ならともかく、村の為に何かする義理は何もないのだから。

私は断った。しかし村長はため息と共に言葉を紡ぐ。

「元々、村をでるのじゃろう?」
部屋の隅にある荷物に目をやる。そして次の言葉に私は黙り込んでしまう。つまり、旅の費用である。それはどうするのか、と。
私は言葉もなかった。正直に言えば旅の費用は一切ない。貧しい占い師の家に蓄えはないのである。

私は旅の途中で働きながら稼ぐつもりだったのだ。それしか手段はない。
しかし、その事を村長に話す気はなかった。沈黙を返事の代わりにしていると、村長は話しかけてくる。

「私の依頼を引き受けてくれれば、ある程度の旅費は面倒見てやる。どうだ?」
「・・・・・」
言葉がない。
その後も旅費の必要性をとくとく語られた。

仕方がない。

「承知しました」
私はため息と一緒に返事をしていた。

こうして私は村長の依頼と共に旅立つ事になった。
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