私 ホームヘルパーです。

第１章 ドタバタ劇の始まり

　「武井と申します。　どうぞよろしくお願いいたします。」
ここ、介護事業所　クリスタルサポートで私は初めての挨拶をした。　「武井さんはヘルパー初めてなのよね？」
事業管理者だという吉岡恵子が鋭い目つきで聞いてくる。　「そうです。」
「ホームヘルパーは家政婦とは違うんだから言われたことを全部やっちゃダメよ。」　「そうなんですか？」
「全部やるってことは利用者さんを甘やかすことになるから、最初に決めたことだけをやってね。」　「は、はい。」
　そこへ相談支援員と名乗る男性が入ってきた。　「こんにちは。　玉沢光一です。　よろしく。」
「彼はね、障碍者の利用者さんを担当してくれてるの。　介護保険で言うところのケアマネージャーね。　障碍者は自立支援法で動いてるからそれだけ覚えといて。」
　今日もヘルパーステーションは忙しそう。　職員は出たり入ったり、、、。
ホームヘルパーも居ればガイドヘルパーも居る。　相談支援員も居ればケアマネージャーも居る。
その上に管理者と呼ばれる人が居て、全ての情報はこの人に集まってくる。
高齢者も居れば障碍者も居る。　人によってやることは様々、、、。
生活の介助、入浴や排せつの介助、調理、掃除、通院介護、同行援助、、、。
頭が混乱しそうなくらいにやることがたくさん有る。

　「武井さんは初めてだから、、、えっと、、、松井さんに同行してもらおうかな。」　「分かりました。」
「最初は見てていいからやることを覚えてね。」　「はい。」
　松井公子　５８歳。　ヘルパーの中では古株で、なかなか厳しいことを言うことで有名な人だそうだ。
見掛けは優しそうなんだけどなあ。　「武井さん　行くわよ。」
早速厳しい目で見ている。　緊張するなあ。

　「朝一番は８３歳の女性です。　病気で体が不自由なので寝返りの介助と排泄の介助をします。　いいですね？」　「はい。」
私は何が何だか分からないけれど、とにかく返事だけは元気に返して車に乗った。