私 ホームヘルパーです。
 家に帰ってくると夕食の準備をします。 「旦那は、、、。」
言い掛けてハッとする。 「そっか。 今日は帰りがずーーーーーーーっと遅いんだったわ。」
 嬉しいような寂しいような、、、。 それでもまだまだ息子君と娘ちゃんが居るではないかいな。
 気を取り直してフライパンに向かいますか。 今夜はオムレツ。
それだけじゃあ寂しいからサラダも作りましょうね。 でもなんか静かな台所。
 7時近くになってようやくドアが開く音が、、、。 「お腹空いた。」
少し元気の無い百合子が入ってきました。 「どうしたの?」
 「なんか面白くなくて、、、。」 「あたしが?」
「そうじゃなくて、、、。 学校でさあ、虐められてる人が居るの。」 「あんたの学校でも?」
 「うん。 女の子なんだけどね。」 「あんたも虐めてるの?」
「私はしないわよ。 お母さんじゃないんだから。」 「どういう意味よ?」
 「だってお母さんって笑いながら攻めてくるもんねえ。」 「それは怖いわ。」
「でさあ、今夜は何?」 「オムレツ。」
 「オムレツか。 「うん。」
百合子は椅子に座ると漫画を読み始めた。 (何だ、虐めの話は終わりかーーーい。)

 しばらくすると息子君も入ってきました。 「あれ? 父さんは?」
「今日は遅くなるんだって。」 「とうとう雑用係か。」
「何ヨ それ?」 「本職だったら早く帰ってるよね?」 「そうとは思うけど、、、。」
 「あんな大人にはなりたくないなあ。」 「あんただってボーっとしてたらああなるわよ。」
「やだなあ。 そんなこと言わないでよ。」 「バイトはいいの?」
「ああ、今日は休みだから。」 「いっぱい鍛えてもらいなさいね。」
 オムレツを載せた皿を二人の前に置きます。 「おっきいねえ。」
「そう? バンバン食べてね。」 「こんな大きいの入らないよ。」
「あらあら、そうなの?」 こないだ、レストランででっかいの食べてたやないかい。
 私も椅子に座って二人を見ながらオムレツを食べましょうかね。 そしたら息子君が私をジーーーーッと見詰めてきました。
「なあに? 萌えちゃうでしょう?」 「え? お母さん燃えるの? 危ない危ない。」
 百合子が私と息子君を交互に見詰めながらニヤニヤしてますね。 (あの目は何?)
それからは三人で黙々と食べてます。 なんか嫌な予感。

 食事を済ませて食器を洗っていると「私も手伝うわ。」って百合子が言ってきました。
「あらそう? 助かるわ。」 二人並んで後片付け、、、。
 終わってホッとしたら、、、。 「え? なになに?」
私は二人に引き倒されてそのまま激しく愛されてしまいました。 やんだなあ、馬鹿。
 さてさて狸はというと帰ってきたのは11時過ぎでした。 「疲れた。」
「ご苦労様。」 「夕食は?」
「置いてあるわよ。 好きなだけ食べていいからね。」 私はそう言うと部屋に籠って本を読み始めました。
 明日は午後からだからゆーーーーーーーっくり寝れるんですわ。 邪魔が入らないようにしないとね。
「本を読みながらクスクス笑っていると扉が開きました。 「え?」
驚いて振り向いたら百合子が立っていて、、、。 「一緒に寝たい。」って言うんですよ。
(まあいいか。) そう思って私の布団に入れてあげました。

 翌日はお休み。 ゆーーーーーっくり寝れるわ。
ほんとにさあ、どいつもこいつもやらかしてくれるんだから困っちゃうわよ。 しっかりしてよね。
特に毎晩飲んでばかりの狸さん。 きちんと仕事してよね 大変なんだからさ。
 3人の子供を見てるみたいだわ。 早く子育てを卒業したいなあ。
 百合子が寝たのを見届けて居間の様子を見に行くと、、、。 狸が一人寂しく飲んでますですわ。
(まあいいか。) そう思って私はトイレへ、、、。
 そのまま布団に潜り込んで寝てしまったのですが、、、。 悪いママやなあ。
主人がボソボソ言っているのは聞いてたの。 でも付き合うと後が大変だからね。
 それにしても百合子は寝相が悪いなあ。 毛布取らないでよ。
取り返すとすごい唸り声を上げて取り返しに来ます。 頭に来たから布団を出してかぶせてやりました。
私、何してるんだろう? たまに分からなくなるのよねえ。
 でもまあいいか。 どいつもこいつも問題児なんだから。
改めて寝ております。 くっ付いたり離れたりしながらね。

 翌朝、狸はまだまだ寝ております。 出勤時間が遅くなったそうで、、、。
だからって私に絡まないでね。 忙しいんだから。
 百合子も信二も学校へ行ったし、私は午後からだから今のうちに用事を済ませましょうか。
手続きも有るし買い物も有るし、クリーニングの頼まれ物も有るしね。
昼までに終わらせてのんびりしたいわー。 たまには友達とランチもしたいのに、、、。
 でもなんか、そんな暇は無さそうね。 帰ってきたのはお昼だったわ。
 バタバタと帰って来てラーメンを啜って出撃準備を、、、。 今日は2時からなのよ。
しかもねえ、高山さんが最初なの。 焦るなあ。
 狸の話をして以来、話し込むことが多くなっちゃって。 利用者さんと個人的な話はしないようにって言われてるんだけど、、、。
でもさあ、溜まった膿は出さないと困るのよね。 悶々としてたら何処かで爆発するから。

 「おー、居たのか?」 「居たのか?じゃないわよ。 馬鹿。」
「馬鹿とはひどいなあ。」 「じゃあ、アホって言う?」
「それもまたひどいなあ。」 「じゃあ何て言えばいいのよ?」
「ご主人様。」 「ブ、あんたがご主人様だって? 笑わせるんじゃないわよ。 アホ狸。」
「、、、。」 狸が黙り込んだところでゲームセットねえ。
 一休みするんだから邪魔しないでね。 お坊ちゃん。
 それにしてもほんとに疲れる狸だわ。 何でこんなのと結婚したんだろう?
部屋の隅に置いてあったクッションを枕に一眠りしましょう。 その間、あの狸は放置の刑よ。

 さてさて1時を過ぎまして戦闘開始ですわよ。 洗濯ものをあらあら取り込んでそのまんま外へダッシューーーーーーーーーー!
「あらあら、元気いいわねえ。」 誰かと思ったら公子さんじゃないかいな。
「うわ、、、。」 「なあに? 驚いた顔して。」
「いえいえ、こんな所で会うとは思わなかったもんで。」 「私でごめんなさいね。 頑張って行ってきてね。」
 公子さんが「頑張れ。」なんて言うことはまずもって絶対に有りませんです。 何か有りそう。
お互いにやらかさなきゃいいけどなあ。 そう思いながら高山さんの家へ、、、。
 「こんにちはーーーーーー。 ヘルパーでーーーーーす。」 「元気良過ぎやないかい。 どないしたん?」
「どないもこないも有りません。 私はいつでも元気満点ですよ。」 ヘヘって笑って見せるけど、、、。
 「そんなん言うけどこないだは元気無かったやん。」 鋭い突っ込み。
「そんなこと無いですよーーーー。 今日もやりますからねえ。」 「何を?」
 高山さんが不思議そうに言うので私は思わずこけました。 「こけてもええけど、家を壊さんでな。」
「いえいえ、高山さんとは違うからそこまでは、、、。」 「こないだも派手にこけたやんか。」
「それは言わないで。」 私は思わず蒼くなってしまった。

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