私 ホームヘルパーです。
 掃除をささっとやって食事を作ります。 玉ねぎを切っていると高山さんが後ろに立ちました。
「ホワーーーー、びっくりした。」 「そんなん驚かんでいいやんか。」
「驚くわよ。 足音もしないんだから。」 「幽霊じゃないんやで 俺。」
「幽霊みたいなもんよ。 高山さんは。」 「何でやねん?」
 こうしていつものように馬鹿話をしながら仕事をしてます。 「肩 凝ってるんやなあ。」
「そうですか?」 「こんな仕事をしてアホな旦那に振り回されて可哀そうやなあ。」
「そう思います?」 「そや。 可愛がったろうか?」
「でも、、、。」 戸惑っていると高山さんの手が頭に、、、。
 なんか頭を撫でられるのって久しぶり。 キュンキュンしちゃうわねえ。
私がおとなしくなったもんだから高山さんは背中から抱いてきました。 「それはちょっとまずいんじゃ、、、?」
「ええやんか。 秘密にしたるでな。」 「でも、、、。」
「任せとき。 公子さんたちには言わんから。」 「それじゃあ、、、。」
 なぜか私は高山さんを受け入れたんです。 狸に疲れてたのも有るし、高山さんも一人だからって。
それでこれからは日曜日に会うことにしました。 もちろん個人的にね。
こんなことやっちゃいけないんだけど、、、。 でもね、抑えられないの。
 あそこまで優しくされたら泣けちゃうわよ。 王子様なのかなあ?
 そうして高山さんの家を出る時にはなぜかニヤニヤしている私なのでした。 (公子さんには会いたくないなあ。)
そう思いながら次の家へ。 今度は80歳のおじいちゃん 森山武人さんです。
ああ、緊張する。 やばいやばい。
 そう思いながら小走りに走っています。 「こんにちはーーーー。」
そこへ誰かの声が聞こえました。 と振り返った瞬間、つんのめって電柱に激突、、、。
「いたーーーーーーーい。」 「大丈夫? 武井さん。」
「え? いやいや、、、。」 「どうしたの?」
「次の家に急いでたんですよ。」 「あらあら、ごめんなさいねえ。 急に声掛けちゃって。」
鈴子さんは笑いながら車で走り去っていきました。 公子さんじゃなかったからいいけど、、、。

 何だか今日は浮足立ってる気がするなあ。 高山さんに背中から抱かれて以来、、、。
どうもね、あの温もりが忘れられないのよ。 久しぶりに恋しちゃったのかなあ?
高山さんって逞しそうだし激しそうだし、耐えられるかなあ? 何を考えてるんだろう 私。
 狸が狸だからしょうがないのよ。 おかげでうちは変な家族になっちゃったし。
さてさて仕事を終えてブラブラと散歩しながら帰りましょうか。 子供たちが歩いてるなあ。
(たまにはお菓子でも買って帰るか。) そう思って近所のお菓子屋さんに入ってみると、、、。
 どっかで見掛けたようなおじさんが、、、。 「チョコレートください。」
「はーい。」 店の奥からおばちゃんが出てきてその人にチョコレートの紹介をしてます。
顔がチラッと見えたので私はハッとしました。 高山さんだったんだわ。
 それで私はお目当てのチョコレートと飴玉を買うと逃げるように帰ってきました。 「ああ、驚いた。」
「何が?」 「え?」
 居ないと思っていた百合子が居るではないかいな。 「どうしたの?」
「うん。 部活もつまんないから逃げてきた。」 「あらまあ、、、。 あんたも狸と同じことをやってるのねえ。」
「えーーーーー? お父さんと同じなの? 私って。」 「そうみたいねえ。」
「親子だからしょうがないか。」 百合子は話しながら私が持っているレジ袋をジーーっと見詰めています。
「2個買ってきたからあげるわ。」 そう言ってチョコを渡したんですけど、、、。
 テーブルに置いた瞬間にまたまた百合子が飛び付いてきました。 これで何回目だろう?
 狸親父は深夜まで帰ってこないからまず大丈夫。 でも息子ちゃんは、、、。
 百合子と思いっきり絡み合ったところでスマホが鳴りました。 (誰だろう?)
出てみると息子君ではないかいな。 「ママ、今日は食べてくるから遅くなるよ。」
「はいはい。 気を付けてね。」 言うが早いか私は台所へ、、、。
 百合子はというとチョコを食べながらテレビを見てますねえ。 手伝えよ こら!
「手伝ってくれないかなあ?」 「疲れちゃった。」
「何でよ?」 「お母さん 激しいんだもん。」
「は? あんたのほうが数倍激しかったけど、、、。」 「そうかなあ? ふつうにやったんだけど、、、。」
「おいおい、エッチにふつうとか異常とか有るんかい?」 「有るみたいよ。 お母さんは欲求不満ね。」
(あんたほどじゃないわよ。) 言い返したいんだけど図星だわ。
ああもう、困った家族を何とかしてくれ。

 「お兄ちゃん 何だって?」 「今日は遅くなるんだって。 食べてくるらしいわよ。」
「そっか。 じゃあママとお風呂も入れるね?」 「何? 一緒に入りたい?」
「うん。」 「冗談でしょ?」
「ほ、ん、き。」 何だそれ?

 まあいいかってことでお風呂も百合子と一緒に入ることにした私なのです。 「ママ大好き。」
「いいけどさあ、大人になったら離れてね。」 「何でよ?」
「お母さんだってやりたいことたーーーーーーーーーーっくさん有るんだから。」
「そんなに有るの? 手伝ってあげる。」 「あのあのあの、、、手伝いはいいから。」
「だってお母さん一人じゃ大変でしょう?」 「いいのいいの。 ほっといて。」
ああもう、、、何でこうもみんな揃って分からず屋なの? 狸の遺伝子がダメなのねえ?
貰わなきゃよかったわ。 あんなやつ。
 お風呂上りは幸せな時間。 狸も居ないしのーんびりしましょう。
と思って居間で寝転んでいたらそのまま寝てしまったわ。 (ん? 何か重たいぞ。)
 どれくらい寝てたんでしょうか? 気が付くと息子君が私の上に、、、。
「帰ったのね?」って言う間も無く抱かれてしまってました。 何でやねーーーん?
 いいんだけどさあ、みんな揃いも揃って飢え過ぎよ。 飢え過ぎ。
私は風俗嬢でも何でもなくてあなたたちのお母さんなの。 みんな分かってる?
 汗だくになって萌えまくっていながらそんなことをブツブツ言っている私なのでした。 人間終わりたいわ。
 「まだ無理だよ。」 「何 聞いてるのよ? 趣味悪いなあ。」
「息子とエッチする方がよほどに趣味悪いと思うけど、、、。」 「あんたから手を出してきたんでしょうがね。」
「そうだっけ? お母さん 寂しそうだったからさあ、、、。」 (寂しかったら何でもいいんかーーーーーーい?)
 この日も狸が帰ってきたのは11時過ぎのこと。 静かにご飯を食べてますねえ。
(またまた突然に辞めるなんて言わないでね。 お腹がひっくり返るから。) 何のこっちゃ?
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