私 ホームヘルパーです。
 話が終わったと思ったら、、、。 「武井さん 次はあなたがやるのよ。」って言ってきた。
「次?ですか?」 「そうや。 早く慣れてもらわないと私が次の仕事に回れないの。」
成れている人は違うな。 やっぱり専業主婦の私では無理かも?
 車に乗ると休む間も無く次の家へ、、、。 「次はねえ、料理を作るの。 武井さんは料理作れる?」
「そんなの作れるに決まってるでしょう!」 思わず言いそうになったけれど、グッと飲み込んで飲み込んで、、、。
「出来ないことは有りません。 ただ、何処までやればいいかは分からないんですけど、、、。」 公子さんはハンドルを握ったままで私を見てニヤッと笑った。
(気持ち悪い人やなあ。 なんで笑ったんだろう?) 私にはその意味が分からない。
 「高山さん 来たよ。」 「はーーい。 なんだ、公子さんか。」
「何だは無いでしょう。 こうして毎週来てやってるのに、、、。」 「来てやってるんなら来んでもいいよ。」
「ほな、帰ろうか。」 「待て待て。 仕事もせんで帰るんですか?」
「来んでもいいって言ったじゃない。」 「ごめんごめん。 入ってくれ。」
「偉そうに、、、。」 「お互い様やないか。」
「んでなあ、今日は新人さんを連れてきたから紹介するよ。」 「へえ、公子さんよりいい人が居たの?」
「それは分からん。 武井美和子さんや。 よろしく頼みますよ。」 「よろしく頼まれますよ。」
「高山さんはねえ、目が見えないのよ。 でもね、味には超が100個付くくらいにうるさいから覚悟してね。」 「そんな大げさな、、、。」
「武井美和子と申します。 よろしくお願いします。」 私は右手を差し出して彼の手を握った。
「冷たい手やなあ。 冷え性有るやろ?」 「あ、あ、有ります。」
「高山さん もう口説いてるのか?」 「まだや。 手慣らしをしてんねん。」
「じゃあ、武井さん 台所に行ってくれる? 食材は冷蔵庫にたーーーーーっくさん入ってるから。」 「そんなたーーーーーっくさんは無いよ。」
「有るでしょう? いっつも山ほど買ってくるじゃない。」 「そんな山になるほど買わんけど、、、。」
 公子も冷蔵庫を開けてみる。 「お肉もたくさん有るし、野菜もいっぱい有るなあ。」
「武井さんって何歳なの?」 「こらこら、高山さん 口説いたらいかんって言うてるでしょう?」
「口説いてない。 年を聞いただけや。」 「40云歳です。」
「そうか。 45歳か。」 「まあ、そういうことにしておきます。」
「武井さん 無視してもいいのよ。 聞こえない振りしてもいいんだからね。」 「意地悪なおばさんやなあ。」
「何だって?」 「意地悪や言うたんやけど。」
「その後よ その後。」 「お姉さんって言うたけど。」
「おばさんって言ったでしょ あんた?」 「うわ、利用者に向かってあんたって言うた。 ひどいおばさんやあ。」
「あんたもひどいおじさんやなあ。」 「どっちもどっちやないかい。」
私にはこの場をどう見ればいいのか分からない。 この二人もまた、いつもこうなんだろうなあ。
「料理は1時間半だからね。 その中で作れる物は作って、作れない物は無理して作らなくていいから。」 「はい。」
「公子さんはねえ、子供まで作ってくれるんだよ。」 「子供?」
「そうそう。 もう3人くらい作ったかなあ。」 「高山さんとですか?」
「こらこら、おじい、何を言い出すの? 焦るやろう?」 「ワー、公子さんが焦ってるーーー。 浮気してるんだってーーー。」
「武井さん、こんなのは相手にせんでもいいからね。」 「分かってます。」
「うわ、うわ、武井さんもひどいなあ。 少しくらい乗ってよ。」 「乗ったら転がるわ。」
「えーーーー、武井さんまで、、、。」 なんだか分からないけれど、笑っている間に料理が三つ出来上がった。
「今日も作っておいたから食べてね 高山さん。」 「分かった。 食べてやるよ。」
「まあまあ、偉そうに。 次からは武井さんだからね。 私とは違うからそのつもりで。」
 それで私たちは高山さんの家を出ると事務所に戻ってきた。
 「3時までは何も無いから自由にしてて。 洗濯してきてもいいのよ。」 「分かりました。」
私は家に戻ってきた。 洗濯物もだいぶ乾いてきたし、郵便物も来てるし、お昼もまだだったし、、、。
取り敢えず、素麺を茹でて流し込んだら一休み。 でも面白い人たちだったなあ。
時計は1時40分。 2時半に事務所に行けばいいか、、、。
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