私 ホームヘルパーです。
と思ってのんびりしていたらスマホが鳴りました。 「武井さん 今何してる?」
「はい。 お昼休みです。」 「予定が変更になったからすぐに事務所に来て。」
「今からですか?」 「そうそう。 すぐにって言ったら今よ。」
「分かりました。」 私はスマホを切ると慌てて家を飛び出した。
それで事務所に行ってみると、、、。 「あれあれ? 武井さん 何を慌ててるの?」
「いや、公子さんに今から来いって言われたもんだから、、、。」 「あらあら、そうなんだ。」
奥の部屋でのんびりしているサービス管理責任者の横山澄江がニヤッと笑っている。 なんか気になるなあ。
「あらあら、武井さん 来ちゃったの?」 「予定が変更になったって言うから、、、。」
「嘘よ嘘。」 「ええ? 騙したんですか?」
「騙したんじゃなくて試したの。 素直に聞くかどうか、、、。」 「公子さんも相変わらず意地悪だなあ。」
「相変わらず?」 「そう。 新人さんにはいつもやるのよ。」
他のヘルパーさんたちはみんな外勤中で、事務所は静かなもんだ。 その中で澄江さんと公子さんがクスクス笑ってる。
(このやろめ、いつか仕返しするからな。) 私はそっと決意して椅子に座った。
この事務所は商店街の一角に在る。 隣は文房具屋さん。
反対側にはクレープ屋さん。 その隣はなぜか郵便局。
昭和も50年代には相当に賑やかで向かい側にはゲーセンとファミレスが並んでいた。
それが90年代に入るとバブル崩壊と価格破壊に押し流されてやっていけなくなったのか廃業してしまった。
それでも最近ではレトロタウンプロジェクトとかいう奇妙な打ち出しが有って、その第一号が麻雀店だったからどうなってるんだ?
んで、聞いたところによると次はビリヤードハウスだって言うじゃない。 おかしいわよ。
考えることはたくさん有るの この町は。 んで予定の時間が来た。
「さてと、武井さん 行くわよ。」 公子さんが椅子から立ち上がった時にはもう私は玄関で待っている。
「早いのねえ。」 「新人が待たせるわけにはいかないから、、、。」
「そうよねそうよね。」 フフ、勝った。
「これから行くのは脳梗塞で寝たきりのお婆さんです。 お話は聞き取りにくいかもね。 悪い人じゃないんだけど。」 「分かりました。 何をするんですか?」
「おむつ交換とお尻の洗浄ね。」 「分かりました。」
さっきの公子さんを思い出してみる。 今度はおむつだからちょいと違うかも。
「吉村さん ご機嫌はいかがですか?」 「まあ、なんとか、、、。」
「よしよし。 あ、いっぱい出てるねえ。 交換するからね。」 吉村タケさんは昭和初期の生まれ。
もう100歳も間近。 倒れて3年ほど。
元気に動き回ってた頃よりはずいぶんと足も細くなったんだって。 同居している息子さんの奥さんが言ってた。
その息子さんは15年前に癌で亡くなったんだって。 それはそれは可哀そうなくらいにタケさんも落ち込んだらしい。
それはそうだよね。 30を過ぎてやっと授かった一人息子さんだったんだもん。
でもおかげでお孫さんは4人も居るし、曾孫さんは7人も居る。
末広がりっていうのかなあ いいよなあ。 「武井さん 洗浄してくれる?」
ボーっとしていたら公子さんがボトルを出してきた。 緊張しながら洗浄を始めると、、、。
「そこはもっと思い切り吹き掛けてもいいわよ。 怖がらないの。 堂々としなさい。」 あれやこれやと助言をしてくれる。
ビューっと思い切り噴射したらタケさんが驚いたように足を振り上げた。 「そうそう。 それくらいやってもいいわよ。」
「とは言うけど、、、。」 「恥ずかしがっちゃダメなの。 やらせてもらうんだからね。」
でも気付いてみたらマットはびしょびしょ。 「濡れちゃったわねえ。 交換するわ。」
公子さんはまたまた澄ました顔で新しいマットを出してきた。 「さあ終わりますよ。」
1時間くらいの作業かな、、、。 家を出たら公子さんは思いっきり背伸びをした。
「屈んでると腰が痛くてねえ。」 「そうですよねえ。」
取り敢えず相槌を打っておく。 無視すると何を言われるか分からないから。
「今日はこれでおしまいです。 事務所に帰ったらレポートを出してくださいね。」 「分かりました。」
でもでも公子さんは事務所に帰るなり、新しいエプロンを持って飛び出していくのでありました。
「はい。 お昼休みです。」 「予定が変更になったからすぐに事務所に来て。」
「今からですか?」 「そうそう。 すぐにって言ったら今よ。」
「分かりました。」 私はスマホを切ると慌てて家を飛び出した。
それで事務所に行ってみると、、、。 「あれあれ? 武井さん 何を慌ててるの?」
「いや、公子さんに今から来いって言われたもんだから、、、。」 「あらあら、そうなんだ。」
奥の部屋でのんびりしているサービス管理責任者の横山澄江がニヤッと笑っている。 なんか気になるなあ。
「あらあら、武井さん 来ちゃったの?」 「予定が変更になったって言うから、、、。」
「嘘よ嘘。」 「ええ? 騙したんですか?」
「騙したんじゃなくて試したの。 素直に聞くかどうか、、、。」 「公子さんも相変わらず意地悪だなあ。」
「相変わらず?」 「そう。 新人さんにはいつもやるのよ。」
他のヘルパーさんたちはみんな外勤中で、事務所は静かなもんだ。 その中で澄江さんと公子さんがクスクス笑ってる。
(このやろめ、いつか仕返しするからな。) 私はそっと決意して椅子に座った。
この事務所は商店街の一角に在る。 隣は文房具屋さん。
反対側にはクレープ屋さん。 その隣はなぜか郵便局。
昭和も50年代には相当に賑やかで向かい側にはゲーセンとファミレスが並んでいた。
それが90年代に入るとバブル崩壊と価格破壊に押し流されてやっていけなくなったのか廃業してしまった。
それでも最近ではレトロタウンプロジェクトとかいう奇妙な打ち出しが有って、その第一号が麻雀店だったからどうなってるんだ?
んで、聞いたところによると次はビリヤードハウスだって言うじゃない。 おかしいわよ。
考えることはたくさん有るの この町は。 んで予定の時間が来た。
「さてと、武井さん 行くわよ。」 公子さんが椅子から立ち上がった時にはもう私は玄関で待っている。
「早いのねえ。」 「新人が待たせるわけにはいかないから、、、。」
「そうよねそうよね。」 フフ、勝った。
「これから行くのは脳梗塞で寝たきりのお婆さんです。 お話は聞き取りにくいかもね。 悪い人じゃないんだけど。」 「分かりました。 何をするんですか?」
「おむつ交換とお尻の洗浄ね。」 「分かりました。」
さっきの公子さんを思い出してみる。 今度はおむつだからちょいと違うかも。
「吉村さん ご機嫌はいかがですか?」 「まあ、なんとか、、、。」
「よしよし。 あ、いっぱい出てるねえ。 交換するからね。」 吉村タケさんは昭和初期の生まれ。
もう100歳も間近。 倒れて3年ほど。
元気に動き回ってた頃よりはずいぶんと足も細くなったんだって。 同居している息子さんの奥さんが言ってた。
その息子さんは15年前に癌で亡くなったんだって。 それはそれは可哀そうなくらいにタケさんも落ち込んだらしい。
それはそうだよね。 30を過ぎてやっと授かった一人息子さんだったんだもん。
でもおかげでお孫さんは4人も居るし、曾孫さんは7人も居る。
末広がりっていうのかなあ いいよなあ。 「武井さん 洗浄してくれる?」
ボーっとしていたら公子さんがボトルを出してきた。 緊張しながら洗浄を始めると、、、。
「そこはもっと思い切り吹き掛けてもいいわよ。 怖がらないの。 堂々としなさい。」 あれやこれやと助言をしてくれる。
ビューっと思い切り噴射したらタケさんが驚いたように足を振り上げた。 「そうそう。 それくらいやってもいいわよ。」
「とは言うけど、、、。」 「恥ずかしがっちゃダメなの。 やらせてもらうんだからね。」
でも気付いてみたらマットはびしょびしょ。 「濡れちゃったわねえ。 交換するわ。」
公子さんはまたまた澄ました顔で新しいマットを出してきた。 「さあ終わりますよ。」
1時間くらいの作業かな、、、。 家を出たら公子さんは思いっきり背伸びをした。
「屈んでると腰が痛くてねえ。」 「そうですよねえ。」
取り敢えず相槌を打っておく。 無視すると何を言われるか分からないから。
「今日はこれでおしまいです。 事務所に帰ったらレポートを出してくださいね。」 「分かりました。」
でもでも公子さんは事務所に帰るなり、新しいエプロンを持って飛び出していくのでありました。