私 ホームヘルパーです。
「山下さんはねえ、足が悪いだけだから掃除と食事を作ります。 夜の相手まではしなくていいからねえ。」 「あんたもしてないやんか。」
「まあまあ、元気な人だわー。 立つんでしょうねえ?」 「立つって何が?」
私は思わず真面目に聞いてしまった。 澄江さんは、、、。
「これよ これ。」 そう言いながらズボンの前を指差している。
私は返事に困ってしまった。 「まあまあ、武井さんも若いのねえ。 もしかして昨日やったの?」
ど真ん中な問い掛けに言葉を失った私は掃除道具を取りに行った。
背中を二人の笑い声が追い掛けてきたのですが、、、。
掃除をしながら一方では食事を作っています。 掃除は1時間なのよねえ。
調理のほうは最大限1時間半も取ってあるけど、、、。 私は玄関からトイレまで時間を気にしながら動き回ってます。
澄江さんはその間、山下さんと話ながらのんびり食事を作っています。 どっちがいいのかなあ?
でもそれは究極の選択のような気がするけど、、、。
だってさ、掃除を選べば休むこと無く動き回らないといけないし、調理を選ぶと山下さんの相手もしなきゃなのよねえ。
何とか掃除を終わらせてベッドのそばに戻ってきたら山下さんが、、、。
「澄江さん、この人は誰?」って聞いてきた。 そうそう、まだ自己紹介すらしてなかったのよ 私。
「ああ、武井さんね。 これから一緒に来る新人さんなの。 よろしくね 山下さん。」 「なんだ、新人さんか。」
「なんだは無いだろう、このやろめ!」 私が膨れていると、、、。
「山下さん 武井さんもいい人だから可愛がってやってね。」って言ってきた。 冷や汗ばっかりだなあ。
調理が終わると辺りの点検を済ませて部屋を出る。 ドアを閉めるとまたガチャって音がした。
次の現場へバタバタと移動する。 と思ったらマンションの1階だった。
「こんにちはーーー。 ヘルパーですーーー。」 澄江さんは相変わらずのハイテンションだ。
私がキョトンとしていると「ヘルパーは勢いが大事なの。 勢いが無いと相手に飲み込まれちゃうのよ。」って教えてくれた。
次に行くのは75歳、認知症も始まったおばあちゃんだ。 澄江さんも孫と間違えられて大変なんだって。
「吉川ゆきのさん、お元気ですか?」 「おー、理恵子 来たか。」
「私はヘルパーですよ。 おばあちゃん。」 ゆきのさんは澄江さんの手を握って懐かしそうな顔をしている。
そんなおばあちゃんの顔を見ながら澄江さんが教えてくれた。
「理恵子さんってね、長女だったの。 でも10年前に子宮癌で亡くなってるのよ。 だからこんな時は理恵子さんに成り切ってあげてね。」
「そうなのか、、、。」 私は澄江さんの笑顔を見ながら胸が熱くなった。
「さあて、今日もバリバリやりますからねえ。」 澄江さんは雑巾とバケツを持ってきた。
「私は机を拭くからあなたは窓を拭いてくださいな。」 「窓、、、?」
「そうよ。 中だけでいいから。」 「窓ねえ、、、。」
私が不満そうに窓を拭いていると雑巾が飛んできた。 「やらせてもらえるだけ有り難いと思いなさい。」
「グ、、、。」 ここまで来たら何も言えないわ。
(黙ってやるしか無いわね。) そう、ヘルパーって時にはめっちゃ厳しいんです。
ニコニコしながら箒を飛ばしてきたりもするから迂闊に逆らえませんのです。 澄江さんは特に、、、。
公子さんは言うだけだからいいけれど、澄江さんは笑いながら爆弾を投げてくるからおっかない。
窓を拭き終わると澄江さんが命ずるままトイレへ直行。 でも便器を見たらしたくなりそう。
洗っている振りをしてやっちゃいました。 そしたら、、、。
「ねえねえ、あなたやったでしょう?」 耳元でこそこそしてきます。
ごまかすのが大変なの。 笑ってスルーしたら、、、。
「使わせてもらったのなら、ゆきのさんにお礼くらい言いなさい!」ってマジで怒鳴られてしまった。
今日はさっぱりいいことが無いなあ。 私がしょんぼりしていると今度は、、、。
「何しょんぼりしてるの? ヘルパーは笑顔が物を言う仕事なのよ。 笑えないなら帰りなさい。」 そこまで言われてしまった。
きついなあ、それにしても。 しょうがないか。
仕事を終えてマンションを出ると「昼ねえ。 ご飯食べようか。」と澄江さんが言い出す。
「は、はい。。」 「何縮こまってるの? 元気出しなさいよ。」
(あんたがさんざんに言うから私は縮こまってるのよ。 分かってないなあ。) 昼からは行く所も無いから家に帰るだけ。
「武井さんはいいわよねえ。 これで仕事は終わりなんだから、、、。」 「へ?」
「私なんてねえ、午後からも3軒行かなきゃいけないのよ。 代ってほしいわ。」 (あんたが決めたんでしょうが。)
「大変ですねえ。」って相槌だけは軽く打っておく。 無視すると怒鳴り出すからね、この人。
昼食はそこらのラーメン屋。 最近、ラーメンばかり食べてる気がする。
たまには他のやつを食べたいなあ。 「好きな店に行ってもいいのよ。」
澄江さんは暢気に言うけれど、そんなことしたら置いて行かれるわよ 私が。
だって、会社の車で来てるんだからね。 それくらい考えてよ。
んでまあ、30分くらいで食べ終わると事務所に戻るんです。 途中で私は降ろしてもらいましたけど。
家に帰ってくると夕べやりかけた洗濯の続きをします。 多いのよ 量が。
ベランダに干すのも大変なのよねえ。 下着だのユニフォームだのっていろいろ有って。
下着なんてさあ、見える所には干せないから場所を考えなきゃだし、ゴワゴワしてる物も有るから体力使うし、、、。
ヘルパー仕事の後にこんな重労働をさせるなっての! 母の悲鳴。
でもなんかさあ、私ってお母さんだって思われてないのよねえ 息子にも。 娘には「お手伝いさんだ。」って言われちゃったし、どうしてくれるのよ?
洗濯物を干したら次は食事、、、。 ああ忙しい。
頭がクルクル回って走り回ってますが、何をどこまでやったのか覚えてませんです。 誰か助けて!
何? それだったらヘルパーなんて辞めちゃえばいいのにって?
やんなきゃよかったなあって思う時も有るわよ。 忙しいしこき使われるし、給料は安いしねえ。
でもやんなきゃ財布が保てないのよ。 旦那も給料安いからさあ。
ああ、言っちゃったあ。 殺されるわ 私。
そんなわけで夕方になりました。 今日も旦那は遅いんです。
息子はバイトに行ってしまったし、娘はさっさと部屋に籠ってしまいました。 寂しいわー。
何とかしてよって感じ。 食堂、けっこう広いから何か出そうで怖いのよねえ。
お父さんが作った家だって言うけれど、これじゃあマジで幽霊屋敷じゃないの。 考えてよ。
廊下はミシミシ言ってるし、階段は急で軋んでるし、2階の床は抜けそうだし、いいこと無いじゃないのよーー。
旦那に話したら「お前がデブだからダメなんだよ。」って涼しい顔で言ってくるの。 あんたのほうが余程にデブじゃないかいな。
中年になってお腹も出てきたしねえ、旦那様。 いつまでも若いって思うんじゃないわよ!
「まあまあ、元気な人だわー。 立つんでしょうねえ?」 「立つって何が?」
私は思わず真面目に聞いてしまった。 澄江さんは、、、。
「これよ これ。」 そう言いながらズボンの前を指差している。
私は返事に困ってしまった。 「まあまあ、武井さんも若いのねえ。 もしかして昨日やったの?」
ど真ん中な問い掛けに言葉を失った私は掃除道具を取りに行った。
背中を二人の笑い声が追い掛けてきたのですが、、、。
掃除をしながら一方では食事を作っています。 掃除は1時間なのよねえ。
調理のほうは最大限1時間半も取ってあるけど、、、。 私は玄関からトイレまで時間を気にしながら動き回ってます。
澄江さんはその間、山下さんと話ながらのんびり食事を作っています。 どっちがいいのかなあ?
でもそれは究極の選択のような気がするけど、、、。
だってさ、掃除を選べば休むこと無く動き回らないといけないし、調理を選ぶと山下さんの相手もしなきゃなのよねえ。
何とか掃除を終わらせてベッドのそばに戻ってきたら山下さんが、、、。
「澄江さん、この人は誰?」って聞いてきた。 そうそう、まだ自己紹介すらしてなかったのよ 私。
「ああ、武井さんね。 これから一緒に来る新人さんなの。 よろしくね 山下さん。」 「なんだ、新人さんか。」
「なんだは無いだろう、このやろめ!」 私が膨れていると、、、。
「山下さん 武井さんもいい人だから可愛がってやってね。」って言ってきた。 冷や汗ばっかりだなあ。
調理が終わると辺りの点検を済ませて部屋を出る。 ドアを閉めるとまたガチャって音がした。
次の現場へバタバタと移動する。 と思ったらマンションの1階だった。
「こんにちはーーー。 ヘルパーですーーー。」 澄江さんは相変わらずのハイテンションだ。
私がキョトンとしていると「ヘルパーは勢いが大事なの。 勢いが無いと相手に飲み込まれちゃうのよ。」って教えてくれた。
次に行くのは75歳、認知症も始まったおばあちゃんだ。 澄江さんも孫と間違えられて大変なんだって。
「吉川ゆきのさん、お元気ですか?」 「おー、理恵子 来たか。」
「私はヘルパーですよ。 おばあちゃん。」 ゆきのさんは澄江さんの手を握って懐かしそうな顔をしている。
そんなおばあちゃんの顔を見ながら澄江さんが教えてくれた。
「理恵子さんってね、長女だったの。 でも10年前に子宮癌で亡くなってるのよ。 だからこんな時は理恵子さんに成り切ってあげてね。」
「そうなのか、、、。」 私は澄江さんの笑顔を見ながら胸が熱くなった。
「さあて、今日もバリバリやりますからねえ。」 澄江さんは雑巾とバケツを持ってきた。
「私は机を拭くからあなたは窓を拭いてくださいな。」 「窓、、、?」
「そうよ。 中だけでいいから。」 「窓ねえ、、、。」
私が不満そうに窓を拭いていると雑巾が飛んできた。 「やらせてもらえるだけ有り難いと思いなさい。」
「グ、、、。」 ここまで来たら何も言えないわ。
(黙ってやるしか無いわね。) そう、ヘルパーって時にはめっちゃ厳しいんです。
ニコニコしながら箒を飛ばしてきたりもするから迂闊に逆らえませんのです。 澄江さんは特に、、、。
公子さんは言うだけだからいいけれど、澄江さんは笑いながら爆弾を投げてくるからおっかない。
窓を拭き終わると澄江さんが命ずるままトイレへ直行。 でも便器を見たらしたくなりそう。
洗っている振りをしてやっちゃいました。 そしたら、、、。
「ねえねえ、あなたやったでしょう?」 耳元でこそこそしてきます。
ごまかすのが大変なの。 笑ってスルーしたら、、、。
「使わせてもらったのなら、ゆきのさんにお礼くらい言いなさい!」ってマジで怒鳴られてしまった。
今日はさっぱりいいことが無いなあ。 私がしょんぼりしていると今度は、、、。
「何しょんぼりしてるの? ヘルパーは笑顔が物を言う仕事なのよ。 笑えないなら帰りなさい。」 そこまで言われてしまった。
きついなあ、それにしても。 しょうがないか。
仕事を終えてマンションを出ると「昼ねえ。 ご飯食べようか。」と澄江さんが言い出す。
「は、はい。。」 「何縮こまってるの? 元気出しなさいよ。」
(あんたがさんざんに言うから私は縮こまってるのよ。 分かってないなあ。) 昼からは行く所も無いから家に帰るだけ。
「武井さんはいいわよねえ。 これで仕事は終わりなんだから、、、。」 「へ?」
「私なんてねえ、午後からも3軒行かなきゃいけないのよ。 代ってほしいわ。」 (あんたが決めたんでしょうが。)
「大変ですねえ。」って相槌だけは軽く打っておく。 無視すると怒鳴り出すからね、この人。
昼食はそこらのラーメン屋。 最近、ラーメンばかり食べてる気がする。
たまには他のやつを食べたいなあ。 「好きな店に行ってもいいのよ。」
澄江さんは暢気に言うけれど、そんなことしたら置いて行かれるわよ 私が。
だって、会社の車で来てるんだからね。 それくらい考えてよ。
んでまあ、30分くらいで食べ終わると事務所に戻るんです。 途中で私は降ろしてもらいましたけど。
家に帰ってくると夕べやりかけた洗濯の続きをします。 多いのよ 量が。
ベランダに干すのも大変なのよねえ。 下着だのユニフォームだのっていろいろ有って。
下着なんてさあ、見える所には干せないから場所を考えなきゃだし、ゴワゴワしてる物も有るから体力使うし、、、。
ヘルパー仕事の後にこんな重労働をさせるなっての! 母の悲鳴。
でもなんかさあ、私ってお母さんだって思われてないのよねえ 息子にも。 娘には「お手伝いさんだ。」って言われちゃったし、どうしてくれるのよ?
洗濯物を干したら次は食事、、、。 ああ忙しい。
頭がクルクル回って走り回ってますが、何をどこまでやったのか覚えてませんです。 誰か助けて!
何? それだったらヘルパーなんて辞めちゃえばいいのにって?
やんなきゃよかったなあって思う時も有るわよ。 忙しいしこき使われるし、給料は安いしねえ。
でもやんなきゃ財布が保てないのよ。 旦那も給料安いからさあ。
ああ、言っちゃったあ。 殺されるわ 私。
そんなわけで夕方になりました。 今日も旦那は遅いんです。
息子はバイトに行ってしまったし、娘はさっさと部屋に籠ってしまいました。 寂しいわー。
何とかしてよって感じ。 食堂、けっこう広いから何か出そうで怖いのよねえ。
お父さんが作った家だって言うけれど、これじゃあマジで幽霊屋敷じゃないの。 考えてよ。
廊下はミシミシ言ってるし、階段は急で軋んでるし、2階の床は抜けそうだし、いいこと無いじゃないのよーー。
旦那に話したら「お前がデブだからダメなんだよ。」って涼しい顔で言ってくるの。 あんたのほうが余程にデブじゃないかいな。
中年になってお腹も出てきたしねえ、旦那様。 いつまでも若いって思うんじゃないわよ!