私 ホームヘルパーです。
 それからバタバタとお風呂の用意もしてやっと落ち着いた10時ごろのこと、、、。
「ただいま。」 酔っ払い親父が帰ってきました。
と思ったら、、、。 「腹減った。」
「何ですって? 今頃腹減った?」 「スナックだったから飲んでばかりでさあ、、、。」
「はいはい。 あなたのだーいすきなマグロよ。」 「それだけ?」
「ハンバーグだって何だってたーーーーっくさん有りますからたーーーっくさん食べていいわよ。」 そう言うとさすがの旦那も黙り込んで食べ始めました。
あんたねえ、エッチする時は可愛いだの何だのッてうるさいくらいに喋るくせにご飯の時はだんまりかーーーーい。
ブチ切れそうなので私は自分の部屋に隠れます。 ところが、、、。
「話したいんだからさあ、こっちに来いよ。」って。 いったい何様なのよ あなたは?
 しょうがないから今夜は付き合ってやるわ。 動き回って眠いんだから考えてよね。
まあ、明日は休みだからどうにでもなるけどさあ、、、。

 そう思って朝食を用意したらさっさと布団の中へ、、、。 そこへ旦那が入ってきた。
「何か有ったの?」 「気分悪いからって休んだ。」
(冗談じゃねえよ。 これじゃあゆっくり休めないじゃないよ。) 顔には出さないけど、私怒ってます。
そしたらさあ、旦那様は気持ち悪いくらいにくっ付いてくるのよ。 朝っぱらからエッチでもやる気ですか?
って思ってたら本当にやってきた。 ああ、うざいなあ こいつ。
でもまあ可愛がってやらないと言い訳してずる休みするからなあ。
そんなわけで私たちは朝っぱらから布団の中で絡み合ってるわけです。 なんとかしてよーーーー。
 んで、旦那様はそのまんま寝てしまわれました。 いい御身分よねえ まったく。
あなたの相手をしてやってる私はやることがたーーーーーーっくさん有るんだから分かってよ。
 昼になりまして、起きない旦那様は放置してママ友とランチ、、、。 すっきりするわねえ。
くだらないことばっか喋ってるけど酔っ払いと喋るよりよほどにましだわ。
2時間ほどお喋りタイムを過ごしてきて帰ってみたら旦那様はまだまだお休みでした。 チャンチャン。

 今日は買い物という買い物も無いから楽だわーーーーー。
え? 何か聞こえたぞ。 耳を澄ましていると旦那の寝言でしたわ。
たまの休みなんだからのんびりさせてよね まったく。 今日も文句ばっかり、、、。
 やっと旦那が目を覚ましましたねえ。 今度は何?
私の胸ばかりジロジロと見詰めてるけどどうかしまして? 「色っぽくなったねえ。」だって。
そりゃあ、あなたにあれだけ激しく愛されてるんだもん。 色っぽくもなりますわ。 ならなかったら、あなたが終わってるのよ。
たまにはさあ、文句を言わないでいい日って無いのかなあ? ねえ、旦那様。
 夜になるとまたまた旦那様がくっ付いてきます。 「もっとやろうよ。」だって。
疲れるから今度ね。 私も働いてるからさあ。
専業主婦だったら一日何回でもお相手するわ。 でも私、ホームヘルパーなのよ。
毎日ニヤニヤしてられないの。 うるさいおばさんが居てねえ。
でもねえ、寝ている間に愛されちゃいました。 私終わったわ。
もうすぐ43にもなるんだからちょっとは考えてよね。 お姉さんとは違うのよ。
って自分で何言ってるんだか分かってるのかな 私。

 翌日はまた公子さんと同伴です。 一日夕鬱になりそうだわ。
公子さんは楽しそうなんだけどねえ。 こき使われる私の身にもなってよね。
朝から2軒ほど回ってきました。 ああ疲れた。
一服して昼休み。 事務所は珍しく静かです。
こんな時は反対に何か起きないかと心配になりますが、、、。 「私が見てるから大丈夫よ。」って公子さん。
ああ、ほんとに大丈夫かなあ? ウトウトしていると電話が、、、。
「ええ。 今ねえ、ガイドヘルパーは外勤で居ないのよ。 帰ったら電話させるわね。」 なあんだ。
安心して大きなあくびを一発、、、。 「昨日もたくさんエッチなことやったんでしょう? 疲れてたら帰ってもいいわよ。」
ニヤニヤしている公子さんに突っ込まれてドッキリ。 これじゃあ、あくびも出来ないわ。
「武井さんの旦那さんって激しいのね? 羨ましいわ。」 「そうでもないですよ。」
「でもさあ、仕事中に大あくびなんて幸せねえ。」 何が言いたいの?
うちの旦那で良かったらあなたに差し上げますわ。 お似合いでしょうよ。
 「さて、昼からはお掃除でまた回るからねえ。」 澄まして言うなっての。
あなたはニコニコしながら雑巾を投げてくるでしょう? 逃げるの大変なんだからね。
そこへガイドヘルパーの山内惠介君が帰ってきました。 「さっきさあ、弓田君から相談の電話が来てたわよ。 してやってくれる?」
気持ち悪いくらいの優しい声で公子さんは話すんです。 私にはうるさいのにねえ。

 事務所を出ましてお掃除先へ、、、。 今日は若い女の子らしいです。
「吉岡真理恵さん。 足が悪くてね、車いすに乗ってる方なの。 ねえ、聞いてる?」 聞いてますけど何か?
「私がトイレの掃除をするからあなたは居間の掃除をしてください。 電動ベッドが有るから大変かとは思うけど、、、。」 「何でもようございます。」
「あらあら、今日は素直なのねえ。 やっぱり旦那さんに愛されてる奥様は違うわねえ。」 何が違うのよ、あなたが愛されてないだけでしょうが。
 「こんにちはーーー。 ヘルパーでーす。」 気持ち悪いなあ。
公子さんってさあ、後ろから付いていくとお尻を振り振りしながら歩くのよねえ。 おばちゃんのお尻なんて見たくないわよ。
って私もおばさんになったらああなるのかなあ? 歌い出しちゃいそうねえ。
私がおばさんになったら、あんたもおじさんだよーーーー。 って何か違う。
 真理恵さんは絵が好きな人らしくて、中でもシャガールの絵を集めるのが好きなんだって。 私にはさっぱり分からないわよ。
それで相槌ばかり打っていたら、、、。 「たまには話してあげたらどう?」って雑巾が飛んできた。
「あう、、、。」 それがまたお尻に命中した物だから真理恵さんまで大爆笑。
こんな所でやるんじゃないわよーーーー! 場所くらい考えてよね まったく。
 落ちた雑巾を拾ってトイレに投げ返しますと公子さんがものすごい顔で出てきました。 「あんたねえ、投げ返すんじゃないわよ!」
だったら投げるなっつの。 コントロール良過ぎるでしょ?
真理恵さんは私たちの言い合いをキョトンとした顔で見守っています。 「謝りなさい!」
「公子さんが投げるからいけないんでしょう?」 「生意気なことを言うんじゃないわよ! ここはあんたがやりなさい。 分かったわね?」
「はいはい。 やりますわ。」 さっさとどっか行っちまえ!
ってなわけで後の掃除はぜーんぶ私がやることに、、、。 公子さんはさっさと帰ってしまいました。
「大変ですねえ 武井さんも。」 「いいのよ。 ああやって墓穴を掘ったら謝るしか無いんだから。」
「あの人があそこまで怒ったのは初めてです。 あんな人だったんですねえ。」 「おばちゃんはああなるのよ。 自分が愛されないからって八つ当たりばっかして。」
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