ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
「有名人になってから連絡しても返さないしさぁ。調子乗ってるよな」
恐らく土田先輩のこういうところが嫌で連絡しないのだと思うけど、口は噤んだ。
そんなことより、いい加減解放して欲しい。
「なあ、あいつのゴシップなんか知らない?小さいことでも何でもいいよ」
「お話できることは何もありません。すみません、もういいですか」
「頼むよ。俺いい記事書かないとクビにされるかもしれないんだよ。なぁ、いいじゃんかよ」
「やめてくださいっ!」
ガシッと肩を掴まれ、反射的にその手を払ってしまった。土田先輩はびっくりした表情をした後、低い声で睨み付けた。
「人を汚いものみたいに見て、そういう態度はないんじゃね?俺先輩だよ?」
「……っ」
「おい、なんとか言え――」
「お引き取りください」
私たちの間に割って入ったのは、日華さんのマネージャーの水川さんだった。
水川さんは厳しい眼差しを土田先輩に向け、両手を広げて私たちを守ってくれた。
「社宅まで押しかけてプライバシーを害する行為は、事務所から正式にクレームを入れさせていただきますよ」
「――チッ」
土田先輩は舌打ちをし、大股歩きで去っていく。
「大丈夫でしたか?」
「はい、ありがとうございます」
「たまにああいう輩がいるんですよ。社長にも報告しておきます」