ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
その日の夜、星來を寝かしつけた後に日華さんから電話がかかってきた。まさかのTV電話でかかってきたので、一瞬躊躇う。
軽くリップだけ引いて、通話をタップした。
「あ、あかり?」
「……っ!」
スマホの画面越しの日華さんは、お風呂上がりなのか上半身裸で首にタオルをかけている。髪の毛はまだ濡れているようだ。
「だからっ、服着てくださいって言ってるじゃないですか……!」
「あ、ごめん」
狭い画面の中からチラ見えする胸筋は、直視するより色っぽくて緊張してしまう。いきなりこれは心臓に悪すぎる。
日華さんはガサガサとTシャツを引っ張り出して着替えた。
「見慣れてるはずなのに、あかりは相変わらずかわいいね」
「そういうこと言わないでください」
ぷいっと顔を背けると、日華さんはふふっと笑う。
「それより水川くんに聞いたよ。社宅に嫌な雑誌記者がいたって」
「あ、その人、土田先輩でした」
「えっ!?」
驚いた後に「あーー……」と何か思い当たる節があったようだ。
「土田か……。あのドラマが成功してからやけに連絡くるようになって、週刊誌に就職したの知ってたからブロックしたんだよな」
やっぱりな、と思う。あの様子ではかなりしつこく連絡して嫌な思いをさせられていたのだろう。