ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 日華さんに会う時は専ら彼の家。
 周囲に気をつけながら入ると、変わらない優しい笑顔で私を出迎え、抱きしめてくれる。


「あかりに会いたかった」


 もうそれだけで涙が出そうだった。


「明日はオフだから、久々に……」
「日華さん。」

「ん?」

「今すぐ……抱いてください……」


 私から誘うことなんてなかったから、日華さんは驚いていたと思う。だけどすぐに唇を重ねられ、濃厚なキスが降り注ぐ。

 ヒョイっと軽々しく抱えられたかと思うと、ベッドルームに連れて行かれる。
 優しく寝かされた後に組み敷かれ、角度を変えて何度も唇を食べられた。


「あかりから誘ってくれるなんてね……」

「っ、日華さん……っ」

「何?」

「き、今日は安全日なんです……っ」


 我ながら何を言い出すんだろう。
 でももっと近くで、もっと奥深くで繋がりたかった。乱暴にされてもいい、全身であなたを感じたい。激しく何度も貫いて欲しい。

 これが最後だから。


「ごめんなさい……っ」


 明け方、まだ日が昇る前に私は家を出た。
 最後に彼にキスを落とし、彼の前から姿を消した。
 電話番号も変えてLIMEのアカウントを始めとするSNSも全部消した。

 彼との繋がりは全て消えたかに思っていたけど、私のお腹に宿った命が唯一私と彼を結ぶ繋がりだった。


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