ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


「いかないでぇ〜〜……っ」

「星來ちゃん……」

「パパぁぁぁ」

「星來?」

「パパがいい〜〜」


 その言葉に思わず二人して固まってしまう。星來はボロボロと涙をこぼしながら訴えた。


「パパなら、ずっとせいらといっしょにいてくれるもん……っ」

「星來……」


 まさか星來、そんな風に思ってたなんて――……。
 星來の必死の訴えに私まで泣きそうだった。


「パパだよ」


 日華さんはぎゅっと星來を抱きしめる。


「パパだよ、星來」

「パパ……?」


 涙声で聞き返す星來を更に強く抱きしめる。私の視界から日華さんの表情は見えないけど、多分泣いている。


「ごめんね、ずっと言えなくて……」

「っ、パパぁ……っ」


 二人の姿を見て涙が止まらなかった。
 星來のためにも、ちゃんと一緒になれると決まってから話した方がいいと思っていた。

 いきなりパパになるんだよ、って言われても戸惑わせるだけなんじゃないかって。
 でも、逆に不安にさせていたのかと思うと、もっと早く本当のことを言えばよかった。

 今更ながら恭ちゃんの言っていた「ママを取られると思っていた」の意味がわかった。
 それはつまり、日華さんにパパになって欲しいという思いがあったからなんだね――……。


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