ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 日華さんがそんな子どもみたいな我儘を言うなんて思わず、困るけど笑ってしまう。


「せいらとおるすばんする?」
「お留守番する」
「日華さん!!」
「わかってるよ……あー、ここから1ヶ月も会えないなんて地獄だな」
「そんなこと言わないで、頑張ってください。映画楽しみにしてますから」


 大きな溜息をつき、星來を下ろした。そしてしゃがみ込んで星來の頭を撫でる。


「パパ、お仕事頑張ってくるね」
「パパいっちゃうの?」
「本当は行きたくないけど、星來とママのために頑張るよ。星來が頑張れって応援してくれたら、パパもっと頑張れるな」


 すると星來はうーんと小首を傾げ、ばんざーいと大きく手を伸ばす。


「パパがんばれ〜!」
「あーーーー……やっぱり行きたくない」
「話が違いますよ……」
「嘘だよ。ありがとう、星來。早く帰って来れるように頑張ってくるからね」
「うんっ!」
「帰って来たらいっぱい遊ぼう」
「やったあ!!」


 星來は嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねる。

 もう大丈夫みたいだ。日華さんがパパだってわかったから、安心したのかもしれない。
 子どもは大人が思っているより、周りのことをちゃんと見ている。特に親のことは。

 今回は星來に教えられてしまった。


< 127 / 195 >

この作品をシェア

pagetop