ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
そう言われると途端に寂しくなってしまう私が一番矛盾していると思った。
「昨日から本当にありがとうございました。こんな経験なかなかできないから、すっごく楽しかったです」
「楽しんでもらえてよかった」
それから日華さんはナイフとフォークを置き、真剣な表情で私と星來を見つめる。
「今度の作品は、俺にとって大きな勝負となる。絶対成功させてみせるから」
凛とした眼差しがとても眩しくて、ドキドキしてしまった。
さっきまで大型犬みたいにかわいかったのに。どんな表情でも日華さんならときめきが止まらない。
「はい、頑張ってください」
「ありがとう」
「それと、これ」
私は備え付けの冷蔵庫の中にしまってあったお弁当を差し出した。
昨日のピクニック用に作ったお弁当だ。日華さんにもと思って、別で用意していた。
「お弁当です。冷めてるから温め直してください。
お弁当箱は使い捨てのものにしたので、そのまま捨てちゃってください」
「わあ、ありがとう!すごく嬉しい」
日華さんは頬を綻ばせて本当に喜んでくれた。
「早速お昼に食べるよ」
「はい。それから、体に気をつけてくださいね。無事に帰って来てくれるのを待ってますから」