ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 それがいつからか、変わっていった。
 名前が売れるにつれてど真ん中に立つことが求められるようになり、事務所もそれを推した。

 いつからか自分がバランスを求められる側になっていた。
 もちろん光栄なことだし、どんな役でも真摯に向き合ってきたつもりだった。

 でも、時々わからなくなる。
 自分の向かう道はこれでいいのか、ずっと迷っていた。

 特にあかりがいなくなったあの日から、ずっと自分の進むべき道に自信がなかった。
 あかりのためと頑張ってきたことが、そうじゃないと突き付けられたから。

 俺の迷いに反して仕事は驚く程順調で、流されるままにここまで来た。
 今はあかりと星來を守るため、二人と家族になるためという使命がある。

 そんな時に舞い込んできた一世一代の大チャンス、そして長年の夢が叶えられようとしている。

 失敗したくない、失望されたくない。

 俺は二度と愛する人を失いたくない――。

 そんな焦りが顕著に出てしまっているんだ。なんて自分は情けないのだろう……。


「……すみません」


 監督に向かって深々と頭を下げた。


「もっと真剣に役と向き合います。監督の期待は裏切りません」


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