ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
そこからの撮影は順調だった。
ほぼNGを出すことなく、一発OKを連発することができた。
「日華さん、調子が戻ったんですね!」
マネージャーの水川くんが嬉しそうに水を手渡してくれる。
「さっきのアクションシーン、迫力がすごかったです!思わず手に汗握っちゃいましたよ!」
「ありがとう」
「でも大丈夫ですか?本当はスタントを使う予定なのに、ほとんどアクションを自分でこなしてますけど」
「大丈夫。やりたいんだ」
自分で演じられるところは、可能な限り自分でやりたい。この映画はハードなアクションシーンも多々あるが、スタントマンの方に指導してもらいながら挑戦した。
日々鍛えていてよかったと思った。
「すみません、次のこの台詞のところなんですが」
共演者とも積極的にコミュニケーションを取ろうと努めた。俺には場を和ませるような会話スキルはないので、一つ一つの演技のすり合わせをすることしかできないけど、みんな真剣に向き合ってくれた。
いつの間にか上下関係なく、役者同士で意見交換をできるようになっていた。
「このシーン、マサキはカズキとワカに対して後ろめたさみたいなものを感じてると思うんです」
「ワカもここで積極的にお兄ちゃんたちには話しかけられないですね」
「けどこの時点でカズキは何も気付いてないから、その兄妹間のチグハグさを出したいよね」