ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
第六章
星とダイヤモンド
「あかり、コーヒー」
恭ちゃんが缶コーヒーを差し入れしてくれた。いらない、とふるふる顔を振ったけど、無理矢理持たされてしまう。
手の平からじんわりと熱が広がっていく。
星來はベビーカーの上ですやすやと寝息を立てている。胸にはパンダのぬいぐるみを抱きしめていた。
取り乱した私を落ち着かせるため、恭ちゃんは用事があると言って私と星來をバーベキュー場近くの河川敷に連れ出してくれた。
泣き腫らした酷い顔の私の隣に恭ちゃんは腰掛け、缶コーヒーを空ける。
「で?何があったんだよ」
「……」
「好きな芸能人が倒れてショックってだけの反応じゃないよなぁ?」
あんな風に取り乱して、もう恭ちゃんには誤魔化せない。肩を竦め、意を決して打ち明けることにした。
「陽生日華さんが、星來の父親なの」
恭ちゃんは怪訝そうに私を見返す。
「冗談だろ?」
「本当」
私は掻い摘んでこれまでのことを説明した。日華さんは大学のサークルの先輩で、密かに付き合っていたこと。
俳優として売れていく日華さんに壁を感じるようになったこと。3年前にお別れし、その後星來を授かったこと。
ひょんなことから再会し、再び付き合い始めたこと。世間には絶対に秘密なこと。