ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 何となく聞き覚えのある男性の声に、心拍数が高まるのを感じながら「はい」と答える。


『水川です』
「水川さんっ!?」
『お久しぶりです。日華さんからあなたに連絡してほしいと頼まれました』
「日華さんは無事なんですか!」


 自分でもわかるくらい早口で食い気味に尋ねる。


『今病院で点滴を打ってもらって安静にしています。明日には退院できるそうです』

「そうですか、よかった……」

 
 心の底から安堵し、思わず涙がこぼれ出た。


『過労が原因でした。日華さん、随分無理をされていたようで』
「そうだったんですね……」
『でもすぐに良くなるそうなので、安心してください。ただ撮影が大幅に遅れそうなので、しばらく帰れないと思います』
「私は大丈夫なので、お大事にとお伝えください。栄養のあるものを食べて、ゆっくり休んでほしいと」
『わかりました。必ずお伝えします』


 本当なら今すぐ彼の傍に行って看病したい。栄養のあるものをたくさん作ってあげたい。
 それでも無事なことがわかって安心した。水川さんに感謝しなければいけない。


「よかった……日華さん」


 水川さんとの通話が終了し、ポロポロと涙がとめどなく溢れ出る。そんな私の肩を恭ちゃんは優しくさすってくれた。


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