ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 バッグに入れていたトローチを取り出して差し出す。もし日華さんの調子が悪かった時のため、色々準備していた。


「俳優さんなんですから、声は大事にしないとダメですよ」

「……誰も気づかなかったのにな」


 少し驚きながら、日華さんはトローチを受け取る。


「ありがとう。あかりにはいつも気づかれちゃうね」

「私が一番日華さんのファンだって自信、ありますから」

「ふふ、そっか」


 そんな風に話していたら、いつの間にか頂上に到達していた。見下ろすアトラクションはどれも小粒のように小さくて、光の絨毯が敷かれたみたいだ。


「見て、星來。すごく綺麗だよ」

「すーー……」


 いつの間にか星來は日華さんに寄りかかり、寝息を立てていた。


「寝ちゃったの?」

「ずっとはしゃいでたから疲れたんだろうね」


 日華さんは星來の体をゆっくり倒し、膝を枕にしてあげる。


「おやすみ」


 せっかく頂上まで来たのに残念だけど、今は寝かせてあげよう。


「あかりもこっちにおいでよ」
「え?狭くないですか?」
「いいから」


 言われて立ち上がり、日華さんの隣に行こうとしたら、ゴンドラが揺れる。思わずよろけてしまったところを日華さんが抱き止めてくれた。
 一気に二人の距離が縮まる。


「……っ!」


 まるで引き寄せられるかの如く、唇を塞がれた。


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