ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


「こちらこそ、これからもあかりと仲良くしてやってください」


 余裕ぶって心にもないことを言ってしまった。
 ああ、本当に俺って情けないな。勝手に嫉妬してるくせに、余裕ぶって強がってる。


「それじゃあ俺も失礼します。またな、あかり。
星來ちゃんもまた遊んでね」

「うん、ありがとうね恭ちゃん」
「きょーたん、ばいばい」


 星來はひらひらと手を振って見送っていた。
 去り際も何だか爽やかだなぁと思ってしまう。


「私たちも行きましょうか」
「ねぇ、あかり」
「なんです?」
「いつまで敬語なの?」
「え?」


 あかりはきょとんとした。


「俺にはずっと敬語だから。火浦さんにはタメ口なのに……」
「それは、もう口癖みたいな感じになってるだけですよ」
「……そう」


 彼にはタメ口で気兼ねなく話すのに、未だにさん付けで敬語の自分って――いやこんな些細なことを気にすることがカッコ悪いんだけど。
 あかりが愛してくれているのは俺だってことも充分伝わってる。ほんとに俺って女々しいな。

 自己嫌悪する俺の耳元であかりは囁いた。


「……結婚したら、敬語はやめますね。もうちょっとだけ時間ください」


 照れ臭そうに頬を染めるあかりがあまりにもかわいくて、人目を憚らず抱きしめたい衝動に駆られた。

 ……ああもう、あかりは俺を煽る天才なんだから。


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