ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


「にーちかさーん、にーちかさーん」

「星來、それお歌?」

「にちかさんのうた!」

「なあに、それ」


 よっぽど響きが気に入ったのかな……?
 何とも言えない気持ちで楽しそうに歌う星來を見つめた。

 その時、ふと昨日キャンディをもらったことを思い出す。残念ながらキャンディはまだ星來には食べさせられないので、私がもらおうか。
 包み紙を開けると、赤色の球体がコロンと出てきた。口に入れてみると、ふわりと苺味が広がる。
甘くて美味しい。

 口の中で飴玉を転がしながら、包み紙を折り畳もうとした時、何か文字が書いてあることに気づく。
 広げてよく見てみると、なんと電話番号が書かれていた。

 その下には「良かったらまた会いたいです。」という綺麗で繊細な文字が。
 これは間違いなく、日華さんの字だ。

 慌てて広げた包み紙をくしゃっと丸めた。
 誰にも見られてはいないと思うけど、思わず周囲を見回す。

 まさか、こんなものが書かれていたなんて……。


「……どうして」


 わざわざこんなものを用意していたの?
 あんな態度を取ってしまったのに、それでもこれを私に渡してくれたの?

 こんなもの渡されても、連絡できるわけないのに……。


「ママ〜、あれなあに?」


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