ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
あれ、と星來が指差した先を見ると、何やら人だかりができていた。
星來の手を引いて近づいてみると、機材っぽいものを持っている人もチラホラ見受けられる。
もしかして、何かの撮影をやっているのかな?
「ねぇねぇ!あそこに陽生日華いるらしいよ!」
…………え?
「ドラマの番宣でロケしてるっぽい!」
「えーー!?マジでーー!?生日華見たい!!」
う、嘘でしょ……?
ここにいるの――?
「ママ、にちかさんいるの?」
星來の声でハッとした。星來はじーーっと私を見上げている。
「そ、そうみたいだね……」
「せいら、にちかさんにあいたい!」
「ええっ!?」
「あいたい!」
「でも、日華さんお仕事中みたいだから会うのは難しいかな……」
「や!あいたい!」
ど、どうしよう……。
いや、色んなことを差し置いても撮影中なら邪魔できないし、何とか星來を説得して帰ろう。
「ダメだよ、星來。日華さん今忙しいから」
「やーだー!あいたいのー!」
「誰に会いたいの?」
え…………、うそ……。
なんで――?
そこにいたのは、帽子を目深に被りサングラスをかけた日華さんだった。
マスクもしていて顔半分は隠れているけど、私にはわかる。わかってしまう。