ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 そんなことができるわけがない……!
 それに、もし誰かに聞かれでもしたら大変なことになる。

 私はオロオロと周囲を見回してしまうけど、みんな撮影していると思っているのか誰も気づいていなかった。


「僕の出番はもう終わってるんです。お母さんもどうですか?」

「無理に決まってるじゃないですか……っ」

「大丈夫、僕の家にご招待しますから」


 いやいや、尚更ダメなのでは!?


「いきたい!!」

「ダメだってば!星來、お家でご飯食べよ?」

「やーっ!にちかさんもいっしょがいい!」


 やばい、星來がぐずりモードになってきた。でも、こればっかりは聞いてあげられない。
 どう考えてもアウトすぎる。


「星來……!」

「大丈夫だよ」


 そう言うと日華さんは、べそをかき出した星來を優しく抱き上げた。


「一緒に行こうね」

「うん……っ」

「こうしていれば親子にしか見えません。誰も気づきませんよ」

「……っ」


 最終的に折れるしかなくなっていた。
 頭では絶対にダメだってわかっているのに、どうしてもときめいてしまった。

 親子、という言葉に――。


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