ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
第二章
再び近づく距離
日華さんがタクシーを拾ってくれた。
私はそれだけでドキドキしてしまったけど、運転手さんは助手席に座っているのが陽生日華だとは思っていない様子だった。
星來を膝の上に乗せている間、ずっと落ち着かずにソワソワしていた。
無駄に窓の外をキョロキョロしている。
そんな風に落ち着かない様子がバックミラーに映し出され、日華さんがおかしそうに噴き出す。
「そんなにキョロキョロしなくても大丈夫だよ」
「いや、でも」
「俺プライベートで気づかれたことないから」
「……私はすぐにわかりました」
「じゃあ君以外にはバレないから大丈夫」
そんな言い方、ずるくないですか?
そうやって日華さんはすぐに私の心を掻き乱す。
ダメダメ、星來もいるんだからしっかりしないと。
タクシーは住宅街の一角で停車した。
流石に家の前までは難しいので、数分だけ歩くことになる。日華さんは申し訳なさそうにしていたが、もう少し遠くで停めてもらっても問題なかった。
星來は抱っこしているので大丈夫。
「ここだよ」
芸能人の自宅は豪華な一軒家かタワーマンションだと思っていたら、昔ながらの平屋だった。
特別大きいわけでもない、普通の戸建てだ。
「どうぞ入って」
「お邪魔します……」
「わーーい!」
「あっ星來!まずはおてて洗って」
「そこの右が洗面所だよ」
「ありがとうございます」
壁は木でできていて緑の温もりを感じる。
所々リフォームされているのか、全体的に新築同様にとても綺麗だ。
「散らかっててごめんね。そこのソファに座って」
「はーーい!」
星來は元気にお返事して、ぴょんとソファに飛び乗りそのままジャンプする。