ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
「……お父さんいないの?」
「いないの」
「そうなんだ……いやごめん、何となくそうなのかなとは思ってたんだけど」
恐らく私の左手に指輪がないことで、何となく気づいたのかもしれない。
そもそも旦那がいるとわかっていたら家になんて誘って来ないだろうし。
「星來ちゃんはいくつだっけ?」
「みっつ!」
「3歳かぁ……」
……なんだろう。
今ものすごく胸がざわついた。
「ママー、ねむい」
意識がトリップしかけていたけど、目をこする星來の声でハッとした。
「そろそろお家に帰ろうか」
「うーーん……」
あ、これはダメだ。星來は完全におねむモードになってる。
「星來、抱っこしてあげるから」
「泊まっていく?」
「えっ!?何言ってるんですか!?」
お家に上がるだけでもヒヤヒヤものなのに、その上に泊まるだなんてあり得ない。
「日華さん!あなたは人気俳優なんですよ?
もう少しご自分の立場を考えてください!」
思わず大きな声をあげてしまった。
「……やっぱり迷惑かな」
日華さんは悲しそうな、しょんぼりとした表情になる。まるで犬耳が垂れ下がっているような……庇護欲を掻き立てられるものがある。
「部屋は余ってるし、甥っ子や姪っ子が来た時のために子ども用の服もあるから良かれと思ったけど…そうだよね、困るよね」