ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
日華さんはたまにこういう表情を見せるのだ。
寂しそうな柴犬みたいな表情に、私が弱いと知ってか知らないか……。
大学時代も周囲の人にはミステリアスで何を考えているのかわからないなんて言われていたけど、それは人前であまり感情を見せないだけ。
私の前ではちょっと無防備になる。
それは昔と変わっていないんだなって、嬉しくて仕方ない――。
「……今日はもう遅いですし、星來もこの通りなので一晩だけなら」
「ほ、本当に?」
「こちらこそ本当にいいんですか?」
「もちろん!布団を用意するから」
何故かすごく嬉しそうにしながら、バタバタと押し入れから布団を取り出す日華さん。
テキパキと布団を敷くと、今度はタンスから子ども用のパジャマを取り出した。
「これだと少し大きいかな?あと明日の着替えはこれでもいい?」
「いえ!お気遣いなく」
「姪っ子のお古で良ければもらってよ。祖母がもったいなくて捨てられなかっただけだから。
思い出だからって」
「……それこそいただけませんよ」
「タンスの中に眠ってるより星來ちゃんが着てくれた方が、祖母も嬉しいと思う」
見せてくれたのは、小花柄のかわいらしいワンピースだった。こんなに素敵なもの、本当にいいのかな。