ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


「それから、これは君の分の――俺のスウェットだけど、一回しか着てない綺麗なやつだから」

「……ありがとうございます」

「お風呂にお湯溜めるね」


 そう言って私の横をすり抜けていく。
 渡されたスウェットは微かに優しい香りがした。日華さんの匂いだ。

 星來の服を脱がせ、パジャマに着替えさせた。
 お腹いっぱいになってすぐに眠くなったのか、完全に爆睡している。
 ゆっくり布団の上に寝かせ、掛け布団を掛けた。

 ……ああ、なんでこんなことになってしまったんだろう。

 ダメだダメだと頭でわかっていながらも、流されてしまうところが私の欠点だ。
 こんなことは今日限り。

 明日からは芸能人とただのファンに戻るんだ。


「お風呂沸いたから先にどうぞ」

「ありがとうございます。ただ軽く明日の準備をしたいので、先に入っていてください」

「わかった。じゃあお先にいただくね」


 くるりと背を向ける日華さんを見送る。

 準備という程のものはないけれど、何となく先に入るのは気が引けたから言い訳をしただけだ。
 軽く明日の準備を整えてから、またスマホで求人サイトを見始める。

 とりあえずいくつか応募してみようかな……。
すぐに採用してもらえるかどうかわからないし。

 はあ、本当にどうしてこうなってしまったんだろう――。


「あかり、お風呂空いたよ」


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