ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
突然声をかけられ、ビクッとして慌ててスマホをしまってから「はーい」と言って振り向いた。
振り向いてから、すぐに顔を背ける。
「ちょ……っ、なんで上着てないんですかっ」
そこにいたのは雑誌で見たことのある、見事に割れた腹筋を曝け出した上半身。
ボクサー役を演じてから鍛え始め、そのまま筋トレを続けていると雑誌のインタビューで話していた。
更に風呂上がりという熱った肉体美は、色気を五割り増しにしている。腕の筋肉も逞しくて艶っぽくて、こんなもの至近距離で見せられたら堪らない。
「あ、ごめん。風呂上がりはしばらくこうだから、つい……」
日華さんはTシャツを着る。
それでも一瞬で目に焼き付いてしまったシックスパックが頭から離れられない。
「……ねぇ、あかり。ひょっとして、求人サイト見てた?」
「っ!」
すぐに隠したと思っていたのに、見られてしまったらしい。
「転職を考えてるの?」
「まあ、そうですね。正確には派遣を切られてしまうので」
「それなら、うちで働かない?」
日華さんの突拍子もない提案は何度目だろう。
私は振り向いて怪訝な表情で彼を見た。
「どういうことですか?」
「えっと、うちの家政婦をやってくれないかなぁと……」