ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
「迷惑なんかじゃない、むしろ助かるよ。
家というのは人が住んでいないとダメになってしまう。俺一人ではとても管理し切れないと思っていたけど、祖父母との思い出があるこの家を残したくて、我儘を言って住み続けてるんだ」
「……っ!」
「だから、あかりと星來ちゃんが使ってくれるなら、こんなに有難いことはないんだよ」
「……ずるいです」
「え?」
日華さんはずるい。
昔からそう、あなたのその優しさがずるくて大好きだった。
ご家族のことをとても大切にされているのは、綺麗に手入れされた仏壇からも伝わっていた。
地方で買ってきたであろうお菓子がお供えされているのも、昨日のハンバーグの欠片がお供えされているのも、今でもおじいさんとおばあさんのことを大事に想っている証拠だろう。
朝、仏壇の前で手を合わせている姿も見ている。
私たちを気遣ってくれる優しさも、全部ずるくて好きなんです。
恋をしたいわけではないのに、どうしてあなたは私の心を離してくれないの……?
「……本当にいいんですか?」
「っ、もちろんだよ!」
「では、ご厄介になってもよろしいでしょうか…」
「厄介だなんてとんでもないです。むしろありがとう」
TVの前ではなかなか見せない、頬がゆるんではにかんだ表情。
やっぱりこの人はずるいなと思った。