ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
ああ、幸せだな……なんて酔いしれそうになって、ダメだダメだとTVを見ることの繰り返し。
本当に私ってば、何をしているんだろう。
もうあなたに恋はしたくない。
その結末にハッピーエンドはないってわかっているから。
「ねぇあかり……また俺の出てるドラマ見てるの?」
私は洗濯物を畳みながら、今放送中のドラマを見ていた。刑事ものでもちろんリアタイしているけど、次回を見る前に予習するのが恒例。
「はい、面白いので」
「なんか照れるな……」
「ご自分のドラマ、見られないんですか?」
「あんまり見ないかも……」
「面白いのにもったいないですね」
今作は人気脚本家が手掛けていることもあり、放送前から注目されていたのに。視聴率も悪くなく、見逃し配信の再生数もドラマのトップに食い込んでいる。
陽生日華の主演作として申し分ない代表作になるだろう。
このままいけば、今年はついに日本マカデミー賞主演男優賞も夢ではない。
そう、日華さんにとっては大事な一年なのだ。
「いつもこうやって何度も見てくれてるの?」
「まあ、一応ファンですから」
だから私は、一ファンとしてできる応援をしたい。
そのために「住み込みの雇われ家政婦」以上の一線は絶対に超えない。必要以上に日華さんには近づかない。
なるべく目も合わせないようにした。