ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 保育参観当日。
 星來の支度中に変装した日華さんがやって来て、そのナチュラルな変装っぷりに驚いてしまった。

 黒いポロシャツに細身のジーンズ、髪は無造作に下ろして長い前髪で少し目が隠れる。
 フレームが大きめのメガネをかけ、マスクもしていないのに別人みたいだ。
 すごくナチュラルに、でも完全にオーラを消している。


「どう?バレなさそうでしょ?」

「確かに……変装お上手なんですね」

「てゆーか元々オーラがないのに、仕事中は頑張って出そうとしてるだけだよ」


 またまた謙遜を。

 でも、そういえば大学時代も日華さんは特別目立つ存在ではなかったな。お芝居になると途端にスイッチが入るけど、普段は物静かなタイプだった。

 それでも、いつでも私の目には輝いて見えていたけれど――なんてね。

 そんなわけで私たちは三人で保育園に向かった。日華さんが来てくれることで、星來は朝からご機嫌だった。


「せんせえ!おはよーございますっ」

「おはようございます。星來ちゃんのお母さんも、おはようございます。あら、そちらの方は……」

「おはようございます。えっと、私の兄になります」

「星來の伯父です」

「まあ伯父さんでしたか!」

「僕もお邪魔して大丈夫でしょうか……?」

「もちろんですよ!どうぞ楽しんでいってくださいね!」


 先生は少しも気づいていなかった。
 星來が片親だと知っているからこそ、伯父が来てくれたことを喜んでくれているようだ。

 他のお母さんたちにも何人か挨拶して、兄だと紹介したらみんな信じてくれた。


< 46 / 195 >

この作品をシェア

pagetop