ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


「ね、意外とバレないでしょ?」


 日華さんは楽しそうに耳打ちする。

 確かに意外とバレないことはわかったけれど、嘘をついていることに対しては気が引ける。
 本当のことなんて言えるわけがないので、仕方ないけれど。


「星來ちゃん、伯父さんも来てくれてよかったわねぇ」

「うん!にち、おいたんもいっしょ!」


 ……後は星來がうっかりしなければ、大丈夫だろう。


* * *


 今日の保育参観では、主に子どもたちが保護者の前でダンスを踊る。子どもたちに人気の定番ソングに合わせ、一生懸命踊る姿がかわいらしい。

 星來も小さいおててを大きく動かし、とても上手に踊っていた。家で練習してる姿も見ていたから、とても誇らしい気持ちになる。

 我が子の成長に思わずうるうるしていると、ふと隣からズズッと鼻をすする音が聞こえた。
 横を見たら日華さんが鼻を赤くして、瞳を潤ませている。


「……ごめん、この年になると涙脆くて。子どもが頑張ってる姿なんて、無理だよね」


 目頭を押さえながら小声で囁く日華さん。
 そういう一面があったのは、今日初めて知った。

 私は思わずハンカチを差し出した。


「どうぞ」

「ありがとう」


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