ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 その時、目の前に風に飛ばされた帽子が落ちた。
 それを星來が拾い上げる。


「ああかわいいお嬢ちゃん、拾ってくれてありがとう」


 それはおばあさんのものだったらしく、小走りで星來に近づいた。


「はい!」

「ありがとう。とっても助かったわ」


 おばあさんはニコニコ微笑みながら帽子を受け取る。それからチラリと私たちの方を見た。


「素敵なパパとママねぇ」

「あっいや……」


 咄嗟に違います、と言おうとしたら日華さんが遮った。


「ありがとうございます」


 日華さん!?そんな肯定するみたいなこと……。


「うふふ、本当にありがとう。じゃあね、お嬢ちゃん」

「ばいばーい」


 おばあさんは会釈して行ってしまった。私たちも会釈し、星來は手を振って見送る。


「……俺たち家族に見えるんだね」

「っ、」

「嬉しいな」


――どうしてそんなこと言うの?

 やめて、これ以上私に夢を見せないで。
 私の心をこれ以上掻き乱さないで欲しい。

 ずっと傍にいられるわけじゃないのに……あなたの隣を望んでしまう。
 そんなこと、叶うわけないのに。


「……。」


 私は何も返せなくて、ただ俯くことしかできなかった。


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