ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


* * *


 お弁当を食べ終えたら、今度はふれあいコーナーに行くことにした。
 うさぎやモルモットといった動物に触ったり、抱っこできるコーナーだ。


「星來、触ってみる?」

「……。」


 星來は怖いのか、私の後ろに隠れてぎゅっと服の裾を掴んでいた。
 でも興味はあるのか、恐る恐る覗いている。


「おいで、星來ちゃん。うさぎさんかわいいよ」


 日華さんが抱っこしているのは、垂れた耳がかわいい茶色のうさぎだった。
 日華さんの腕の中で大人しくしている。


「このうさぎさん、大人しくていい子だね」

「うさぎさん、がぶってする?」

「星來ちゃんが優しくしてくれたら、しないよ」


 星來はおずおずと私の背中から出て歩み寄る。
 ぷるぷると手を振るわせながら、慎重にうさぎに手を伸ばす。

 背中にちょっとだけ触れられた。


「っ!もふもふ!」

「もふもふだねぇ」

「うさぎさん、あったかい」

「あったかいね」


 星來は優しく優しくうさぎの背中をなでなでする。


「うさぎさん、星來ちゃんにありがとうって言ってるよ」

「ほんと?」

「うん、優しくしてくれてありがとうって」


 星來は嬉しそうに微笑んだ。
 それから「ママー!さわれた!」と私に駆け寄って抱きつく。


「触れたね。すごいね、星來。かわいかった?」

「かわいかった!」

「よかったね」

「うさぎさん、もふもふ!」


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