ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
「え、これ……」
「今日の思い出にと思って……ダメかな?」
「いいえ、ありがとうございます。喜ぶと思います」
「それと、これはあかりに」
私の手の平に乗せられたのは、小さなロップイヤーのマスコットだった。
「……かわいい」
「これが一番あかりに似てると思ったんだ」
「え?そうですか?」
「うん、かわいくて」
「……っ!」
またこの人はそういうことを言う……!
「もうかわいいなんて年じゃないですから」
「俺にとってはずっとかわいいよ」
「……やめてください」
日華さんの目が見られない。
一瞬でも目を合わせたら、逃れられなくなる怖さを感じた。
――お願いだから、期待させないで。
日華さんが今でも私と同じ気持ちでいてくれてるんじゃないかって……そんなこと思いたくない。
芸能界には綺麗でかわいい女性が沢山いるでしょう?
「あかり、俺……」
「日華さん、そろそろお仕事に行かれる時間じゃないですか?」
夢から醒める時間だ。
シンデレラは0時になる前に自分からガラスの靴を脱ぎ捨てる。
「……そうだね。そろそろ行くよ」
「お気をつけて。このマスコット、ありがとうございます。大切にします」
「うん……あかりも気をつけて帰ってね」