ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
足早に仕事に向かう日華さんの背中を見送りながら、何故だか涙が溢れそうになる。
……ダメだ、やっぱりあなたの傍にいてはいけない。
一刻も早く次の職場を探さないと。
でもそのためには、住むところも探さないといけないし……。なのにお金が足りない。
やっぱり実家にお願いして、一時的にでも厄介になる方がいいのかな。
「……ん、」
「星來?起きたの?」
「に、ちか、しゃん……」
どうやら寝言のようだ。日華さんの夢を見ているのだろうか。
日華さんと離れることになったら、星來は悲しむかな――。
日に日に日華さんに懐いてるもんね。
「……っ、わからない……」
私はどうしたらいいんだろう?
どうするのが正解なのだろう?
日華さんのキャリアを思うなら私はいてはいけない。星來にも会わせるべきではない。
でもそれは……星來にとって本当に良いこと?
こんなにも慕っていて本当は父親なのに、引き離すことが星來にとっての幸せだとは思えなくなってきた。
私はどうしたらいいの?
どうしたら私たち家族は幸せになれるの――?
「誰か教えてよっ、わからないよ……っ!」
私の悲痛な独り言は雑踏の中に紛れて消えた。