ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
「そういう恭ちゃんこそ彼女は?」
「東京異動を機に別れたよ」
「ついてきてくれなかったの?」
「俺も結婚する気なかったしな」
何だかちょっとドライな感じ。もしかして元カノさんとは上手くいってなかったのかな。
「あかりも彼氏いないのか?」
「全然。今は子育てで手一杯だもん」
「じゃあ、俺と結婚する?」
じ、と上目遣いで見つめてくる恭ちゃん。軽く5秒くらい固まった後、噴き出す。
「私が恭ちゃんと?あり得ないでしょ」
「あり得ないまで言うか……」
「恭ちゃんはなんていうか、お兄ちゃんみたいだし」
「ふーーん……俺はあかりが妹だと思ったことはないけどな」
「まあそうだよね。実際は私の方が誕生日早いし」
「……そういう意味じゃねぇよ」
「え?何?」
「何でもねぇ」
なんか恭ちゃん、ちょっとだけ不機嫌っぽい?気のせいかな。
「ごちそうさまでした!奢ってくれてありがとう」
「俺から誘ったしな」
「……最近色々あって気持ちの浮き沈みが激しかったんだけど、恭ちゃんに会えて元気もらえた。
ありがとね」
「あかり……」
「今度は娘にも会ってね」
「ああ。人事の件、また連絡する」
「何から何までありがとう。よろしくお願いします」