ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 恭ちゃんと別れ、駅に向かって歩いている途中、突然誰かに腕を引っ張られる


「!?」


 ものすごい勢いで人通りのない路地裏に連れ込まれたと思ったら――目の前にいたのは日華さんだった。


「日華さん!?どうしてここに?」

「さっきまで近くで撮影してて、終わったところ」

「昨日帰れてませんよね?それからずっとだったんですか?」

「色々あってね……」


 日華さん、何だか顔色が悪い。やっぱりお疲れなんじゃないかな。


「それよりあかり、さっきまで一緒にいた男誰?」

「え……」

「たまたま帰る途中、レストランから出てきたあかりを見かけて」


 え、日華さん見てたの……?


「もしかして、あの男が星來ちゃんの父親?」


 私を捉える日華さんの瞳がいつもと違っていた。真っ直ぐ私を見つめる瞳は、何だか焦燥感のようなものを感じる。


「えっと、あの人は」


 幼馴染です、と答えようとして、言い淀んだ。このまま父親だと肯定してしまった方がいいのでは?
 恭ちゃんには申し訳ないけど、そういうことにさせてもらった方がいいのかも――。


「そうです、彼が星來の父親です」

「っ!」


 どうせお別れしなきゃいけないんだ――後腐れはない方がいい。


「今度一緒に住むことになりました」

「……再婚するってこと?」

「そうなると思います」


 ごめんね、恭ちゃん……。恭ちゃんには絶対迷惑かけないから、今だけ嘘をつかせてください。


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